第8章 アメリカでの仕事
その後は、改めて私の能力についての詳細を赤井さんに話して、明日明後日のスケジュールを大まかに決めていった。
最後に「質問はあるか?」と尋ねられる。
赤井さんに真っ直ぐ視線を向けられると、申し訳ないのだけれどなぜか睨まれてる気がして身体が縮こまってしまう。
質問はない。けど、ひとつだけ言いたいことはある……こんな事を申し出るのって、おこがましいかもしれないけれど……
「あの……差し出がましいことなんですが……たまに休憩を挟ませてもらうことはできますか?」
「……どれくらい休みたいんだ?」
「疲れてきたらその都度休ませてもらえると有り難いと言いますか……」
「すみません、赤井さん。これは私からもお願いします。は能力を使えば使う程、精神的に疲弊していくもんでして……」
「まあ、いいでしょう……時間はたっぷりある」
「ありがとうございます」
「さんは常人には考えられないような事をするんだ、疲れるのも無理はない」
「そ、そうなんです……ご理解いただけると、助かります」
一瞬ドキッとして、呆気に取られてしまった。予想以上に温かい言葉が返ってきたのもだけど、ずっと無表情、強面だった赤井さんの顔が、初めて柔らかく緩んだのだ。
……こんな顔もできるのか。せっかく整った顔してるんだし、こっちの方がいい。むしろ、かなりいい。
無駄に胸がときめいてる気がして落ち着かない。なんなんだコレ……
モヤモヤしつつもそのうちお皿の上は綺麗に空になって、店を出ることになり。
すっかり元の強面に戻ってしまった赤井さんとホテルの前で別れ、中へと入ろうとすると、先生が立ち止まったまま声を掛けてきた。
「なあ」
「はい?」
「今日はすぐに寝れそうか?」
……多分寝れないだろう。聞き返せば先生もそうみたいだ。
なので少し近所を散歩して、感じの良さそうなバーに入った。
英語でスラスラ注文してくれた先生を横目に、私一人じゃ海外旅行は絶対無理だなーとか思いつつ……
出されたお酒と店内の様子を写真に撮って、零くんに送った。
向こうは午前中。キリッとした顔して仕事してるんだろうな。