第8章 アメリカでの仕事
ワシントン・ダレス国際空港に飛行機は到着。
昨日の夕方日本を出てきたのに、着いた先が同じ日の夕方っていう、当たり前なんだけど、不思議な感覚……
荷物を受け取り、先生と二人空港を歩きながら辺りをキョロキョロする。どこかに迎えの人が来ているはずだ。
……あ。明らかに私達を見据えながら近付いてくる長身の男性が目に入る。あの人かもしれない。
どんどんその人との距離は縮まっていき、声を掛けられる程近くなった時……息が止まりそうになった。
上から下まで全身黒っぽい服装のこの人……この前ウチの前に居た、零くんと過去に色々あった人と……物凄く似てる。
「さんとDr.水野ですね。FBIの赤井です。遠い所よく来てくれました」
「ええ……よろしくお願いします。ん?どうした?」
「いえ!すみません。です、今回はよろしくお願いします……」
「頼むぞ。期待しているからな」
「は、はい……」
男性が手を伸ばしてきたので、反射的に握手を交わした。大きくて男性らしい、しっかりした手。
この人が赤井さん……つまり最初に電話をくれた無愛想な人。アメリカ人だし、欧米人っぽい人だとばかり思ってたけど、日本人だと言われた方がしっくりくる容姿だ。
たしか……零くんはあの時ウチの前にいた人は潜入捜査官だったって言ってた……FBIの人なら、そういう可能性って有り得たりする?やっぱり同じ人……?
……頭が混乱してきた。
「では車で送ります。ついてきてください」
言われるがまま、その男性の後をついて歩き、大きな乗用車の後部座席に先生と二人、乗せられる。
「?顔色悪いぞ、大丈夫か?」
「だ、いじょうぶです……」
「大丈夫に見えんから聞いてるんだが……どうしたんだ」
「さん、具合が悪いのか?」
「いえ!本当に大丈夫なので、車、出してください」
「……ああ」
車で一時間ほど走り、まずはワシントンD.C.のFBI本部へ向かうそうだ。
先生の肩を叩き、耳打ちをする。
「私、この人知ってるかもしれないんです……人違いだといいんですけど……ちょっと、日本にいたことあるかとか聞いてみてくださいよ……」
「何……?自分で聞いたらどうだ」
「だって、なんか恐いんですもん……」