第8章 アメリカでの仕事
しばらく絶対返事しない……!それに今度帰ったら私も零くんの変な顔、絶対撮ってやるんだから!
……そう心の中で意気込んで自分の席に戻り、再び読みかけの本を開いた。
だけど読み進めれば進める程、今の自分の状態が我ながら情けなくなってきた。
自分の事って客観的に見づらいけど……もし今の私と同じ状態の人を目の前にしたら、私はこう思うんだろう。
元々他人同士、価値観や意見が合わないのは当たり前。自分のことだけ考えるんじゃなくて、相手のことを考えてみたら、どうすべきかは自然と分かるはず。
まあ、私だって本気で怒ってる訳ではないし、そりゃあ、零くんと仲良くしたいっていうのが本音だ……よくよく考えれば、零くんは私が機内で退屈せずに過ごせるように連絡をくれたんだろうし。
メッセージアプリを開いて、また返事を打ち込む。
“ごめん。まさかがこんなに怒るとは思わなかった。
でも可愛いからいいだろ?誰かに見せる訳じゃないし。”
“全然可愛くない。ほんとに誰にも見せない?”
“のこの顔が見れるのは彼氏の特権だろ。誰にも譲らない。”
“絶対だよ?”
“僕は約束は守る。”
結局丸く収まった。これでよかったんだろう。つまらない意地を張っても上手くいくはずがない。
それからまたしばらくメッセージのやり取りが続き。
あくびが出てきて。眠気が強くなってきた。
おやすみの挨拶を送り合ってスマホをしまい、シートを倒してアイマスクを付けた。
次に目を覚まして時計を見れば……結構眠れたみたい。
起きて一時間もしない内に二回目の機内食が運ばれてきて、食べ終わってしばらくすれば、いよいよワシントンに到着だ。