第8章 アメリカでの仕事
無事飛行機は飛び立ち、雲の上。
半日以上かかるフライトって初めてだ。用意してもらった席がビジネスで本当に有難い。向こうに着いたらちゃんとお礼を言わねばならない。
(おそらく渡航費・宿泊費は二人合わせたら日本円で百万超えだ)
不慮の死なんて起こらないのが一番だけど……ここまでしてもらったら、結果何も見れず犯人逮捕に協力できない形で終わるのは申し訳ない……かも。
私の能力のデータ値を正確に、とかではなく、とにかく向こうに貢献できるまではアメリカにいるべきなのか……と思わないでもない。
シートに深く座って、この前買った面白そうな心理学の本を取り出し、パラパラと読み進める。
水野先生は早くもお酒を片手に、ヘッドホンを付けて目の前の画面を見ている。映画か。
思ったよりも美味しくて嬉しい機内食を食べた後、いつの間にかウトウトしてきて……目が覚めて時計を見れば離陸から四時間が経っていた。って言ってもまだたったの三分の一だ……
先生も寝てるみたい。
機内を歩きながらスマホを見ていると、ちょうど零くんからメッセージがあった。
“は飛行機でもしっかり寝れる方か?
寝れなくて暇してたらいくらでも付き合うぞ。”
メッセージの後に、信じ難い写真も送られてきた……目を閉じて寝てる人の顔のアップ。たぶんというか絶対にこれは私だ。この前泊まった時に勝手に撮られてたのか……!しかも変なマヌケ顔!
急いで返信の言葉を打つと、すぐに返事は返ってきて、しばらく言葉のラリーが続く。
“何この写真!いつの間に撮ったの!消してよ!”
“嫌だ。絶対消さない。”
“ありえない!”
“起きてる時の写真も欲しいから、アメリカ着いたら送って。”
“送ったらさっきの消してくれる?”
“消さない。”
……優しい優しいと思ってたけど。零くんってこんなに意地悪だった?
“もう知らない!”とだけ送って、スマホを閉じ、機内をズンズン歩く。