第7章 サヨナラも告げないまま
「さんは……見ていて飽きませんね」
「そ、そうですか……?」
「ええ。ずっとこのまま見ていられそうです」
「それはちょっと、困るかも……」
行為自体は終わったものの、しばらく経っても頭がボーっとしたまま中々冴えてこず。
隣に寝転んでいる彼に時々微笑まれながら肌を撫でられたりして……
夕食を食べ始めたのは結局午後九時前だった。
「この煮物……好きです。美味しいです」
「よかったー……私料理ヘタだから」
「これだけのものを作れて?僕なんてそもそもできませんからね。さんは上手なんだと思います」
「えっと……食べてもらってる手前言いづらいですけど……これ意外と簡単ですよ?やろうと思えば誰でもできます!やる気があるかが問題です」
「成程……何事もそうかもしれませんね」
なんか上手いこと言ってしまって、彼は感心してくれたようだけど……この煮物はめんつゆと水で煮たものだ。分量さえ間違えなければ誰でもこの味。それは今は言わないでおいた。
和やかに食事を終えて。
彼がお風呂に入ってる内にキッチンを片付けて。
私もお風呂を済ませて。
部屋に戻ると、まるで昨夜に戻ったかのような感覚に陥る。
ベッドで横になっている彼が、どこか挑戦的に見える顔でこっちを見据えていて。
視線が絡まって数秒、足は勝手に彼の方へ向く……
フラフラとベッドの脇まで辿り着くと、彼がこちらを向いたまま上半身を起こす。長い腕に身体が包まれ、転がるようにベッドへ引き込まれた。
時たま囁かれる言葉も、たわやかに触れてくる手も……全部が甘くて、身体中が震えて……何も考えられなくなって……また彼に溺れていく。