第6章 好きの定義とは
零くんはそれでいいと言ってはいたけれど、もしかしたらそれってすごく彼に対して失礼なのかもしれない。零くんをスケープゴートみたいにするとか……
でも今、零くんに強く惹かれているのは事実だ。
真っ直ぐな熱い視線、今までと違う男の顔になった彼に物凄くドキドキして……もっと私に触れてほしいし、私自身も触れたくて堪らない。
「……明日、休みなんだよな?」
「うん」
「……やっぱり、泊まってくか?」
「……いいの?」
「が良ければ」
顔を近付けたまま、言葉を交わして、頷いて、またキスをして。零くんは、頭の後ろを撫でながら耳をくすぐってくる……
首筋に指先を這わせられると、どうしよう、それだけなのにすごく気持ちいい。
意識がフワフワしてきて……気付いたら唇の隙間から彼の舌が入ってくるのを容易く受け入れていた。
柔らかい舌に口内をゆっくり動き回られ、自分の舌と絡まると、軽く吸われて愛撫するみたいに舐められる。
チュッと音がして唇が離れる頃には、身体からすっかり力が抜けてしまっていた。
「あっち行こうか。立って、ほら」と、出された手をやんわり握って、立ち上がろうにも、全然身体に力が入らない。
「腰抜けたのか?……ほんと可愛いんだから……っと」
「……っ!えっ……、重いから!あの!」
零くんに両脇を抱えられ身体を持ち上げられ、部屋の奥へと連れていかれる。
扉を開けた向こう、薄暗い部屋の中にはベッドがあり。その上に身体を降ろされて、そのままそっと倒され零くんが上に覆い被さってくる。
鼻先と鼻先が触れそうな距離で彼が言う。
「本当に、いいのか……?」
……そんなこと、聞かなくたって分かってるだろうに。
返事をする代わりに小さく頷いて、零くんの頭を軽く引き寄せると唇が重なった。
すぐさま深く入り込んできた舌に自分のそれも柔らかく絡め取られて……また頭の中がボヤけてくる。
零くんの手が首すじから肩を通って、手の先まで滑っていき。彼の指先と私の指先が絡まり、そっと握られた。
……キスも、指も、焦れったくなる位すっごく優しい。
男の人とこういう事に至るのは勿論初めてじゃない。でも、こんなに優しく触れられたら、どうしたらいいか分からなくなってくる……