第6章 好きの定義とは
「なあ今度……コイツらの墓参りに来てくれないか?を紹介したい。それからのお父さんとお母さんにも一度会いに行きたい」
「わかった」
多分そうなんだろうな、って薄々思ってはいたけれど、この写真の中の彼らは皆死んでしまってるのだと、改めて認識させられる。
しばらく無言で写真を眺め。
ふと隣の零くんに視線を移すと、どうもやり切れなさそうな顔をしてた。口には出さずとも、やっぱり辛いのかもしれない。
気付いたら私の手は零くんの頭に伸びていて。そっと彼の髪を撫でていた。
一瞬ビックリしたように目が見開かれて、零くんの頭がこっちを向く。
「こういうのちょっと照れるな……でも落ち着くな」
「うん。なんでだろうね……」
手を取られて、ひと回り大きな手に優しく握られた、と思ったら今度は零くんが私の頭を撫でてきた。
ゆっくりと繰り返されるその動きに、自然と顔が笑ってしまう。
「へへ……ほんと、ちょっと恥ずかしいね」
「……と知り合えてよかったよ、本当に」
小さな子どもの頭を撫でるような動きだった彼の手が、髪を梳いて、頬に触れてきて……
もしかして、と思った時には零くんの顔はもう目の前、次の瞬間には、キスされてた。
やけに長く感じた気もするけど、実際唇が触れていたのはおそらくほんの少しの間。
顔こそ離れたものの、じっと見つめ合ったまま、固まってしまった。心臓だけがやたら速く動いている。
「、やっぱり今日はもう帰ろうか」
「……もう?まだ、来たばっかりなのに」
「でもこれ以上一緒にいたら……」
目を逸らされて、なんだか寂しくなる。
これ以上一緒にいたら、何なのだ。その先にあるかもしれない行為のことを案じてるんなら、私はそうなっても構わないと思ってる。
さっきお付き合いを始めたばかりで?今初めてキスをして?まだ早すぎる?
こういうのって、お互いの気持ちが高まったならタイミングなんていつでもいいんじゃないのか。
もう一度彼にこっちを向いてほしくて、なんとなく、零くんの頬に手を置いた。
また目が合って、数秒、どちらからともなく、唇が重なった。
離れてはまた重なり、角度を変えては何度も唇を合わせて……ひとつひとつ、丁寧に繰り返されるキスに、胸の奥が熱くなってくる。