第6章 好きの定義とは
「甘いモノ食べるか?」
「んー……零くんが食べるなら?」
彼は何かを冷凍庫から取り出すと、レンジにかけ始めた。キッチンで動く零くんの姿はなんかサマになってるというか……いやもう彼の場合は何しててもそう見えるのかもしれない。
コーヒーの良い香りが漂い出して少しして、零くんが持ってきたのは、コーヒーと、チーズケーキだった。
「……これもしかして手作り?」
「ああ。前の潜入捜査中に喫茶店で一年ほど働いてて。スイーツ作りはその時に覚えた」
「へえ……零くんが喫茶店……ちょっと見てみたかったかもー。いただきまーす」
隣に腰掛けてきた彼に少しだけ緊張しつつ。コーヒーをひとくち飲んで、ケーキを小さく切って頬張る。うん。美味しい。零くんはこんなのも作れちゃうのか。
「でもその頃にと出会ってたら絶対こうはなれなかった。知り合ったのが今でよかったと思うよ」
「そっか、潜入中って……そうだよね……」
「それにあの時は常に仕事仕事だったし……今みたいにこうしてゆっくりしてる事が、怠けてるように感じるくらい」
「そんなに忙しかったの?」
「一日三時間寝れればいい方だった」
「三時間!私には無理だな……」
「慣れだ、慣れ」
ふと思った。零くんがこの先またそういう仕事に就くことってあるんだろうか。
聞きたいような、でも聞いてそれを肯定されたら切なくなってしまいそうで……何も言わない事にしたけど。
「そうだ……がウチに来たら、コレを見せようと思ってたんだ」
零くんがPCを出してきて、電源を入れ。
しばらくして見せてきたのはおそらく、昔の写真。
「コレ、もしかして……」
「コレがヒロだ。コッチが松田で、コッチが萩原、コレが伊達」
「零くんはコレだね、あっコレも……」
「そうだ」
零くんの若い頃の写真だと思われる。みんなやんちゃそうで可愛い……ていうか零くんとこの松田って人、すごい怪我してる。傷だらけだ。でも写真から楽しそうな空気が伝わってくる。
「みんな可愛いねー」
「可愛いか?……小憎たらしい顔してるようにしか見えないけどな」
そう言いながらも零くんの顔付きはにこやかだ。