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恋のはじめかた【名探偵コナンR18】

第6章 好きの定義とは


「お兄さん今日は赤か、珍しい。いつも白一択なのに」

「今日は、この子に合わせて」


ワインを運んできた店主と思しき中年の男性が、私達の前にそれぞれグラスを置き、ワインを注いでくれる。


「……もしかして、彼女かい?」

「いいえ。そうだったらいいんですけどねー」

「っ!?」

「お似合いに見えるけどなー。いいねー!若いモンは!」

「ありがとうございます」


ハッハッハと笑いながら店主はカウンターの中へ戻っていく。
私が零くんの彼女に見えるか?しかも零くんまであんな事……まあ社交辞令みたいなもんだよね。

注がれたワインをひとくち口に含む。うん、美味しい。


「零くんの恋人は仕事だもんねー」

「だな。でも……みたいな子だったらいい、と思ってるのは本当だけど」

「そ、そうなの……?」

「一緒にいて楽しいし、素の自分でいられるだろ、それに……単純にのことを可愛いとも思う」

「……ありがとう」


まっすぐ目を見られながらそんな事を言われると、結構恥ずかしい。


「僕は、が好きだ」

「私も好きー」

「多分のそれは意味が違う。異性として、恋人になる対象としてはどうだ?」

「それは……ええっ!?」


ワインを飲もうとグラスを傾けていた手が止まり……頭が真っ白になりかける。それってどういうことなのだ。

零くんはすごくいい人だし、好きだけど……その“好き”は恋愛の感情ではないと思う。だからと言って、零くんが男として嫌っていう訳でも無い。むしろ、こんなに素敵な人が彼氏ならいいなーとかなんとか思ったこともあるくらいだ。

一体何と答えればいいのやら……
しかもこんな時だからなのか、こんな時に限ってなのか、“あの彼”の事が頭をチラチラ過ぎってくる。


「迷うってことは……チャンスはあると思えばいいのか?」

「……零くんって、本当にすごく素敵な人だし、優しくって頼りになるし、付き合ったらきっと楽しいんだろうな、って思う。けど……」

「けど?」

「あの……私、忘れられない人が……いて……」

「元カレとか?」

「まあ、そんな感じ……」


その忘れられない人とはたった二日間だけの関係で、しかも素性も知らない男なんだとは到底言いにくい……
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