第1章 不思議な彼女と大きな拾いもの
には、特殊な予知能力のようなものが備わっている。
簡単に言えば彼女は、自分の今居る場所周辺で近い内に起こる人の死を察知できるのだ。
彼女がまだ幼い頃、「明日この道で人が倒れる」とか「今日この川で男の子が溺れる」だとか、が言ったその通りに事故が起こることが何度かあり。
不思議に思った彼女の両親は、彼女を知り合いの精神科医の所に連れていった。そして診察・観察の結果、その特殊な力が事実として確認された。
その診察をした医師というのが俺、水野晃一である。の父親の友人だ。
現在の俺は医師としての仕事はほぼせず、東都大学に籍を置きながら、の不可思議な能力の研究に没頭している。
そして現在のは俺の助手兼被験者だ。東都大の研究員として働いてもらいながら、平日のほぼ大半を俺と共に過ごしている。
この十数年、彼女の能力について調べ分かってきているのは、
・彼女は現在、予知能力の発動と制御を自分でコントロール出来、いつでも人の死が見えてしまう訳ではない。
・能力を使って分かるのは、約二十四時間以内にそこから見える範囲内で起こる不慮の死。事故・自殺・殺人等で、老衰・病死等は含まない。
・彼女はその力を使うと精神的に疲弊し、しばらくかなり無愛想になる。
こんな所だ。
の力は、大々的に世間に発表はしていないものの、一部の組織の中では年々有名になってきている。
警察組織だ。要人が出席する大規模イベントの前に、危険を事前に排除する手段として彼女の能力を使わせてくれ、と要請があるのだ。
一度警察との仕事中に、が本当に人が殺されるのを察知してしまい。危険人物の排除に協力できてからは、要請が急激に増え、今では月に一回は呼ばれている状態。
明後日から東京で開催される首脳サミット関連の部署からも要請があり、は明日から三日も続けて駆り出される事になっている。ちなみに俺も付き添いで同行するのが常だ。
まあ、研究室に金が入って研究費の足しになるのはいいんだが……能力を使った後のあの不機嫌な彼女の相手を三日連続でするのはかなり面倒でもある。