第4章 気の合う人
自宅までの道を二人で歩く。
ちなみに零くんは私を家に送ったら、トレーニングも兼ねて走って自分の家まで帰るんだと。食べて飲んでをした後にそれが出来るなんて、尊敬に値する。私もたまには運動しなきゃいけない……
自宅が近付くにつれ、先日の自宅前での事を色濃く思い出してきた。聞いても大丈夫だろうか。ウチの前に居た、あの男の人の事。
「ねえ零くん」
「なんだ?」
「この前ウチの前に居た人って……誰?」
「ああ……アイツは古い知り合いだ。こそ本当にヤツを知らないのか?」
「実はね、一瞬知り合いかと思ったの。でも顔見たら全然別人だった」
「……ならいい。関わるべきじゃない」
「なに、そんな変な人なの?」
「ある意味変人かもな……アイツに纏わる話も、次のカウンセリングで聞いてもらおうと思ってた内の一つだ……また今度話す」
「わかった」
零くんの声色も、表情も、冷たい。やっぱり聞くべきじゃなかったか。でもいつかは聞かされる事だったのか。
無言のまま自宅の前までやって来て、一人空を見上げる。今日は新月に近い小さな月だ。
「どうしたんだ?星か?」
「星って言うより月かな」
「へえ……」
「毎日見てるの。このクセも辞めなきゃいけないんだけどね」
「ふーん……月を見るくらい、どうってことなさそうだけどな」
「まあね……零くん、今日はありがとう!久しぶりに楽しかった!」
「ああ。お礼を言うのは僕の方だ。次はまた来週、だな」
「うん。帰り、気を付けてね」
「ああ。ありがとう」
はにかむように零くんは笑うと、本当に走って去って行った。しかも結構速いスピード。やっぱ体力あるんだな。
今日は色んなことがあった。寝る前に今夜の数時間の出来事を思い出してみる。
彼とは、いい友達になれるかも。なんだか波長が合うというか。無理に気を使うことなく、自然と過ごせた。
その先のことは……まだちょっと考えられないけど。腕や肩に軽く触れられただけでドギマギしてしまったのは、あまりにも最近男性との接触がなかった所為だろう。
そう言えばお魚の食べ方が綺麗だった……綺麗に食事をする人って男女関係なく好き。
そんな事を考えている内に、眠くなってきて、そのまま落ちた。