第4章 気の合う人
翌朝。出勤し、研究室の掃除を済ませ、もうすぐ来るはずの水野先生が飲むコーヒーの為にお湯を準備していると、案の定ニヤニヤしながら先生が出勤してきた。
「おはようございまーす」
「おはよう、どうだった、昨夜は」
「別に楽しく食べて飲んだだけですよ。先生の期待してるようなピンク色の展開はありません」
「ほう……俺は降谷さんのその後の様子が聞きたかっただけなんだがな」
「……そうですか。彼は若い頃を思い出して楽しんでたと思いますよ。大学東都大だったみたいで」
入れたて熱々のコーヒーを、ギリギリこぼさない程度の強さでドン、と先生のPCの横に置く。
「へえ、そう。そりゃあ何よりだ 。それで?何食いに行ったんだ?……んー?食いもんの趣味でも合ったか?顔が嬉しそうだな」
「彼の食べ方は綺麗でしたね、魚の骨もキレイに取るんですよ。食べる量も飲む量も、ちょうど合う感じだし。また飲みに行きたいなーとは思う……」
「向こうはどう思ってんだろうな、のこと」
「さあ……」
その後も更なる質問攻めは続き。続きながらも仕事に取り掛かる。
すると、研究室直通の電話が鳴り出した。こんな朝早くから誰……と思うが、最近これが鳴る時ってほとんどが警察からの要請だ。私が受話器を取る。
「はい。東都大水野研究室です」
「いつもお世話になっております。警視庁の目暮です」
「……目暮さん。お世話になります」
電話を掛けてきたのは、前にも一度要請を受けたことのある警部さんだった。会ったことはないけれど、声の雰囲気から想像するに、優しい感じのおじさん。
「えー、さんですかな?」
「はい。そうです」
「実は折り入ってご相談がありまして……」
ん?なんかお決まりの文言と違う。協力要請じゃないのか?
「ええ、何でしょうか」
「さんの特殊能力の事をですな……アメリカの連邦捜査局、FBIはご存知ですかね」
「はい……?」
「そのFBIの捜査官があなたの能力に興味を持ったようでして、あなたを紹介して欲しいと頼まれましてな……」
「はい!?えふ、びー、あい……ですか」