第4章 気の合う人
研究室を出て、降谷さんと二人、キャンパス内を歩く。ちなみに水野先生の研究室があるのは医学部の建物。
東都大の医学生達はお勉強にしか興味無いタイプばっかりなんだと思ってたけど、そうでもないのかもしれない。
すれ違う女の子達が降谷さんをチラチラ見てる……そりゃあ、金髪で目立つ上にイケメンときたら……
それにスーツ姿の彼も年齢より若く見えたけど、今日の彼は紺色のTシャツに白い襟付きのシャツを羽織ってて、下は細めのデニム。爽やかで、もっと若く見える。女子大生が騒ぐのも自然なことか。
「さんお腹は空いてます?」
「まあ、それなりに……降谷さんは?」
「僕もそんな感じです。あっ、でも今日は非番ですから、よっぽどの大事件でも起こらない限りお酒も付き合えますよ。今日は歩いて来てますし」
「そっか!それならこの辺でどこか行きましょうか」
「ですね。さん嫌いな食べ物はあります?」
「なんでも食べれます!」
「では、この前は焼き鳥でしたから……」
結局、大学の近所を歩きながら、目に止まった道路脇の黒板に釣られ、その店に入ることになる 。私も入るのは初めての、小さな居酒屋だ。
どうも美味しそうに見えて仕方ない文字が黒板に並んでたのだ。
テーブル席に通され、外の黒板で気になってたものをいくつか頼み。ビールで乾杯する。まだ店内に客は私達だけだ。
「さんはよく患者さんと食事に行くんですか?」
「えっ?いいえ?……多分降谷さんが初めて、だと思います」
「そうなんですか……でもよく誘われません?」
「カウンセリング自体、私はしょっちゅうしてる訳じゃ無いですし……あれですか?カウンセラーは親身になって話を聞いてくれるから患者さんに好意を持たれるんじゃないかって事?」
「そう」
心理士あるあるだ。異性のクライアント(私の業界では患者のことをそう呼ぶ)に恋愛感情を持たれた、あるいは持ってしまった経験がある人は、かなり多いと思う。
二人きりの空間で、自分の弱みをさらけ出す者と、それを認め改善策を考える者、双方の心の距離は、家族や恋人以上に近いように感じる事もあるかもしれない。
(ちなみに私は経験した事がない)