第4章 気の合う人
「僕は本来、今あなた達が見ているような、人当たりの良い性格じゃなかったハズなんです」
「……今の自分は、自分らしくないと言うことですか?」
「ええ」
「……では今の自分が嫌ですか?」
「そういう訳では無いですが……」
「……人間、周りの環境で性格って変わるもんですよ。降谷さんだけが特別って訳じゃない」
「そう言われればそうですが……」
「誰だってそういう事ありますよ。私だってよそ行きの顔と、普段の顔って違うし」
「ああ……今のさんは若干よそ行きの方ですよね?」
「……降谷さん鋭い。その通りです」
「サミットの下見中に休憩してた時の顔は、気が抜けてて可愛らしかったですけど。あれが普段のさんですか?」
……あれは完全に素の私だ。急にこっちが恥ずかしくなってきた。頬が熱い。
「ええ……恥ずかしながらそうかな……でも降谷さんだって警察の人と電話してる時すっごく凛々しくてカッコよくて!ビックリしちゃいましたよねー先生?」
「男の俺に言われてもだな……まあ、多かれ少なかれ皆そういう事はあるって事ですな。降谷さんの場合は、過去のその変化の度合いが大きすぎたって所でしょうか」
「そう考えれば少しは楽になりますかね……」
「うん。それに性格が違ったとしても、今の降谷さんも、昔の降谷さんも、ぜーんぶ降谷さんなんですから」
「……たしかに。なるほど……人に話を聞いてもらうのも、悪くないですね」
そう言って少し笑顔を見せた降谷さんは、なんとなくだけど、顔付きがさっぱりしたように見える。少しは役に立てた……のか。
その後の会話の内容はまた世間話に戻り。
気付けば窓の外の陽がだいぶ傾いてきていた。
「よし。それじゃ、今日はこの辺で終わりにしようか」
「あ、もうこんな時間かぁ……」
「不思議ですね、まだまだ話していたい気分です」
「ねー」
「降谷さん、眠れないとか不安で仕方ないとか、症状が酷いんなら薬を出しますが……」
「……多分、要らないですね」
「よし。そんなら気の合うお前ら二人でメシでも行ってきたらどうだ?俺が後はまとめとくから。、もう上がればいいぞ」
「えっ!……どうします?降谷さん」
「僕は構いませんよ?……行きましょうか」
先生……これも“お膳立て”なのか……?