第14章 二人の選んだ道
「今日俺が来たのは、診療じゃないんだよな。水野」
「ああ。と降谷さんに、いつかは話さなくては、と思ってたんだが……ま、降谷さんはもう大方気付いてらっしゃるかもしれませんが」
「ええ……」
「……どういうこと?」
四人でテーブルを囲んで座り、順を追って先生とオジサンが話し出した。
もう三年程前の話になるのか。水野先生は、私に早く恋愛をして、結婚してほしい、と思ってた。それは知ってる。
そしてオジサンは、部下である零くんにはそろそろ危険な現場仕事からは卒業してもらい、より上の立場になり、後進の育成にあたって欲しい、そして結婚も……と考えていたそうで。
そこで先生とオジサンは結託して、と降谷零を出会わせ、上手くいくよう仕向けていたんだと言う。
ちなみに零くんが式に呼びたいと言ってた上司っていうのも、オジサンのようだ。これにも驚かされた……
「、僕達は、この二人の手のひらの上で転がされてたってことだ」
「嘘でしょ……」
出会って、徐々に親しくなり、お付き合いすることになって……って割と普通の恋愛の段階を踏んできてたと思ってたのは、全部この中年男達の策略だったと……?
ご満悦そうな先生とオジサンを横目に私と零くんは目を合わせて乾いた笑みを交わす……
「でも俺達が手を回したのは出会うキッカケを用意したのと、後はほんの少しだ。結果的に二人が合うからここまで来れたんだろう」
「それはそうでしょうけど……」
なんとも複雑。いや……どうなのこれって。
「降谷に普通に女性を紹介するって言ったって断られるのは目に見えてたしな、仕事を介して強制的に出会わせた訳だ。ハッハッハ……」
「僕らで遊ばないでくださいよ」
「しかし、結婚するんだろ?」
「はい」
「だから今日は、初顔合わせってことで」
「よく見知った顔ですけど」
「まあ、これからよろしく、な。ちゃん、降谷を頼むよ」
「降谷さんも、をよろしくお願いします」
変な違和感のようなものを感じながら、ぎこちなく頭を下げた。
まあ……仕組まれてたからって私と零くんの気持ちが今更変わることも無い。むしろ本当は、キッカケを与えてくれた二人に感謝すべきなのか?