第14章 二人の選んだ道
そうして迎えた結婚式当日。
式の準備はめちゃくちゃ忙しいと聞いた事があるけれど……私たちの場合はそんな事はなかった。呼ぶ人がいないからか。
ドレスとタキシードの試着に行った時も、サラッと決まったし。(真っ白なタキシードを着た零くんは、どこかの王子様みたいだった。冗談じゃなく本当に!)
少し前から零くんと二人で住む部屋を借りて一緒に暮らし始め。その頃から零くんの夜勤の頻度はかなり減った。
幸いにも、同居を始めても特に彼の嫌な所が目に付くこともなく(私はどう思われてるか分からないけど)、仲良く過ごせてると思う。
もしかするとこれが……普通の結婚生活なのかもしれない。
新婦用の部屋で準備を整え、水野先生と対面する。先生は私を見るなり表情が目まぐるしく変わり、涙を堪えてるのか変な顔。こっちまで泣きたくなってくるからやめてほしい。
「……綺麗になったなぁ……」
「先生、泣かないでくださいよ?私だってせっかく綺麗にしてもらったんだから泣きたくないです」
「花嫁に涙は付きもんだろう……」
「別に嫁いだって先生と私の関係は何も変わらないですよ……でもね……ありがとうございました……零くんに会わせてくれて」
ゆっくり頭を下げて、戻すと、先生の涙腺は崩壊寸前のようだ……もらい泣きしてしまいそうなのを必死で振り切る。
「行きますよ!零くんとオジサンが待ってますから!」
「ああ……よし!」
差し出された腕に手を掛けて、零くん達の待つ場所へ向かう。
式の参列者は先生と、オジサン、それから大事な人達の写真だけ。でも、今日世界中で一番幸せなのはきっと私達だ。
健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか。
ずっとただの形式的な言葉だと思ってたこの文言が、今日はスーっと心に染み込むように馴染む。
END