第14章 二人の選んだ道
「アメリカにはあとどれくらいいるつもりなんだ?とりあえず一年、と当初は言っていたように思うが」
「……まだハッキリした日は決めてないんですけどね、あともうそんなに長くはないと思います」
「ほう……降谷くんの仕事の都合がついたか」
「……だから、なんでいつもいつもそうなるんですか」
「違うのか?」
「そんなことばっかり言うんならもうお酒は付き合いません!」
先程閉じた本に再び手を伸ばす。
「まあそう怒るな……楽しく飲もう」
「じゃあ楽しくなるような話題にしてくださいよ……」
「ではコレは知っているか……?はビュロウやDC警察の男連中に、裏で“赤井の女”と呼ばれている」
「っ、うそ!?知りませんて!何それ……」
口に含んだビールを吹き出しそうになった。
(ちなみにビュロウはFBI、DC警察はワシントン警察だ)
「俺の周りをチョロチョロしている可愛い日本人がいる、と一時期噂になっていたそうでな」
「それ……なんか褒められてるのか貶されてるのか分かりませんね……」
「まあそれはさておきだ、目当ての局員が俺達の部署に来る度に、ボスが“彼女は赤井くんのだ”と言って追い払っているらしい」
「……ジェイムズさんが……そうですか……そう……」
「日本人女性はモテるからな」
「私は物珍しいだけでしょ……それなら秀一さんだって!こないだのDC警察の人とか、フィラデルフィア市警の人もそうですよ。女性がみんな秀一さんに色目使ってるの知ってます?」
「使わせておけばいい。嫌われるよりマシだろう」
「……そういう考え方もあるんですね」
「それにその方がコチラに良い情報を回してくれるかもしれん、とは思わんか?」
「たしかに……」
秀一さんと働いてみてハッキリ分かったことだけど、彼は、めちゃくちゃモテるのだ。(おかげで私は働き出した当初FBIの女性局員に毎日睨まれてた)
無愛想で淡々と喋る彼がたまに見せる笑顔だったり優しさだったりに、女性達は皆ハートを撃ち抜かれるんだろうか……
かくいう私も、初めてアメリカで秀一さんと仕事した時は……かなり良い印象を持った覚えがある……
でも私にはもっと素敵な恋人がいるから。そしてその彼にもうすぐ会えるのだ。やっと。あと数時間……