第13章 決断のその先
……どうしてだか、また涙が滲んできた。肩が細かく震える。
それに零くんは気付いたのか、そっと身体を離して少し屈んだ。私と頭の高さを合わせて、両手で頬を挟むと、親指の腹で涙を拭ってくる。
「ほんと……可愛い」
「嘘だ、絶対変な顔してる」
「それがまた可愛いんだって」
優しく微笑む零くんに、じっと目を見られてる気がして……酷い事になってるだろう目で睨み返すけど効果は全く無いみたいだ。
彼の顔が目の前に迫ってきて、反射的に目を閉じる。ひとつずつ、片方ずつ、目尻とまぶたにキスをされて……次は唇が重なった。
ちょっと塩辛い。でもすごく温かくて、胸がいっぱいになってくる……
これからの事を話してた筈が、いつしか夢中でキスを繰り返していて。
零くんの手が乳房にかかり、急に我に返った。身体がビクッと固まって、キスも止まる。
「……?……今日はしたくない、か?」
片胸に手を添えたまま、目の前の零くんが聞いてくる。
したくない訳ではない。首を横に振る。
「ごめん、ちょっとビックリしただけ……へへ」
笑って誤魔化したけど、本当は……一瞬にして昨夜の秀一さんとの事を思い出してしまって焦ってた。
忘れたい、全部。
「まだ話の途中だったもんな……つい」
零くんが身体を離して、元いた所へ戻ろうとする。その腕を掴んで引っ張る。
見上げた彼の瞳は動揺してるのか、少し揺れてる。
「行かないで……」
「……いいのか?」
声を出さずに、零くんを見上げたまま頷いた。
零くんに思いっ切り抱かれて、全部忘れたい。
ネクタイを緩めて、首元のボタンを外しながら、再び零くんは顔を近付けてきた。もうその彼の瞳はすっかり欲に満ちていて……耳元でまた二つの提案をされて、背すじがゾクゾクと震える。
「じゃあ話は一旦中断ってことで……このままここでセックスするか、それともベッドでじっくりたっぷりするか……が選んでいい」
「え……っ……」
「早く選んで」
「……ベッド、がいい」
「分かった」
途端に身体が宙に浮き、零くんに横抱きにされて寝室へ運ばれる。