第13章 決断のその先
「……うん、私もそうしたい」
色んな感情がグチャグチャに入り交じって、気付いたら目に涙が滲んできていた。
零くんが私の事をちゃんと真剣に考えててくれてた事への嬉しさと、
そんな零くんを裏切るような行為をした事への罪悪感、
全てを話さず隠そうとしてる自分への情けなさ……
それに、考えたくなくても、どうしても出てきてしまう、“あの彼”とやっと会えたのに、もうあの腕に自分は抱いてもらえない切なさも……
「?泣いてるのか?」
「ごめん……っ、なんか勝手に……」
大きくなった涙の粒がついにポロポロと溢れ出しそうだ。隣に駆け寄ってきた零くんに頭と背中を抱かれて、手のひらが優しく頭の後ろを撫でてくる。
本当、情けないやら、申し訳ないやら……
「零くん、スーツ、汚れる……っ」
「いいから……泣き止むまでこうしてる」
ごめんなさい、ありがとう……
これは心理学的にも言われてる話だけど、頭を撫でる行為は本当に人間の心を落ち着かせる作用があるようで。
一分も経たないうちに涙は……止まった。
「ありがと……零くん」
「落ち着いたか」
「ん……っ、ありがとう……」
軽く抱き寄せられたまま、零くんの話が続く。
「じゃあ……ひとつ、聞いてもいいか?」
「うん……?」
「、前に言ってたろ?忘れられない男がいるって」
「ああ……」
「今ソイツはどうなった」
「……もう全然だよ。今は、零くんの事でいっぱいだから……」
嘘のような、本当のような……でも“そうありたい”と思ってる本心が口から飛び出した。
自然と零くんの身体に腕が伸びていて、そのまま抱き着く。
「……よかった」
零くんの穏やかな声が上から聞こえてきて。
頭に浮かんできた単語がただただ言葉になる。
「零くん……すき……だいすき……」
「……」
「……れいくん……すき……」
「……僕も大好きだ」
うわ言みたいにその言い合いを何度も繰り返して、互いの身体をキツく抱き締め合う。
零くんが好きで、何よりも大切で……その気持ちに偽る所は何ひとつ無い。
いつの間に、こんなに好きになってたんだろう。