第13章 決断のその先
「それだけっていうか……今、アメリカに来ないかって誘われてて。FBIと仕事しないかって……それで今日、会ってた」
「そういう事か……」
零くんの表情が一気に緩み、部屋の空気が少し柔らいだ気がする。
これ以上の追求は無さそう、って内心ホッとしてる私は……本当にズルい、けど、やっぱり何も言えなくて……
「いや、今日赤井が女といるのを都内のホテルで見かけたって聞いて」
「うん」
「一緒にいる女の特徴を聞けばどうもとよく似てるんだし、まさかと思ってに電話すればそのホテルの近くに居るって言うだろ……」
だから零くんの様子があんなだったのか。本当に秀一さんの事になると……零くんは別人のように豹変する。
「多分私だね、ホテルのラウンジで話してたから……何も言ってなくて……ごめん」
「成程な……実は少し変に疑ってたんだ……僕も悪かった……で、どうなんだ?はアメリカに行きたいのか?」
「それは……零くんにも相談しようと思ってた所だったんだけど……」
アメリカなら日本にいるより遥かに多くの人の力になれるかもしれない、でも毎日あの仕事をするのは気乗りしない。
そして一番の問題は、向こうに住むとなれば零くんと離れて暮らすことになるし、こうなった今だから言える事だけど、赤井さんもそっちには居るし、あまり零くんにとって良い話ではないよね……
そのような内容を話して、「どう思う?」と尋ねた。
「本当は、のやりたいようにすればいい……って言いたい所だけど……僕からも話したい事がある」
「うん……なに?」
また部屋の空気がピンと張り詰めた。嫌な雰囲気は感じないけど……何の話だ。
「にだから話すけど、結果がどうなっても、絶対に他には言うなよ」
「……分かった」
「警察の上層部内で、今、新たにスパイとして犯罪組織に潜入する捜査官を吟味してるみたいなんだ。僕に声が掛かる可能性は大いにある」
「うん……」
「もしその話が来たら、引き受けようと思う。だけど……まずその話自体を来ないようにすることも出来ると思ってる」
「そうなの……?」
「ああ。にも、よく考えて欲しい。選択肢は二つだ」
えらく真剣な顔をした零くんから発される次の言葉を、息を飲んで待つ。