第2章 恋はまだ始まらない
溜め息のような大きめの息をついた瞬間、スマホにメールが届いた音がして。
確認してみると、送信元が“降谷零”で驚いた。開けてみればその内容にもっと驚くのだけれど……
----------------
今回はお世話になりました。
財布が車にあったんですが、
さんのじゃないですか?
ないと困るでしょうから届けます。
今どちらにいらっしゃいますか?
気付いたら連絡ください。
僕の連絡先です。
090XXXXXXXX
降谷
----------------
急いで鞄の中を確認してみると、たしかに、財布が無い。そう言えば名刺入れ出した時に財布も出したんだったか……
メールに書かれた電話番号をタップすれば、当然だけどその番号へ電話が発信される。
「はい。降谷です」
「もしもし!です!」
「さん!良かった!すぐに気付いてくれて。今どちらにいらっしゃいます?」
「えーっと……東都大のそばの……」
今いる店の名前を言いかけて、ふと思い留まる。女一人で焼き鳥屋でビール煽ってる姿を、知り合ったばかりの男性(しかもイケメン)に見られるのって、ちょっと恥ずかしくないか。
でも財布が無ければココのお会計すら払えないんだし……正直に店の名前を伝えた。
「分かりました。すぐ向かいます」
「すみません……お願いします……」
電話を切って数分後、本当にすぐに降谷さんは店に現れた。
さっきよりも少しネクタイが緩んでて襟元も開いてて……それもまたいい感じだな……なんて全然関係無い事が頭を過ぎる。
「あーもう!ありがとうございます!ほんとに助かりました……全然気付いてなくて……ココのお金も払えない所でした……」
「僕もさん達を降ろした時に確認するべきでした」
「いやいや……ほんっとにすみませんでした!」
何度も頭を下げる。降谷さんは何も悪くない。
「もういいですから……それよりあの、さん、おひとりなんですか?」
「……そうですけど」
「まだしばらくこちらにいます?」
「ええ、まだしばらくは」
「じゃあ、ご一緒しても?」
「……はい。どうぞ?」
……何故か降谷さんとカウンターに並ぶことになった。