第12章 密会は堂々と行われる
そして翌朝、何かの気配で目が覚めた。
「すまん、起こしたか」
「ん……だいじょぶ、です……」
隣には身体を起こしかけている秀一さんがいた。昨夜散々声を上げた私の喉はガラガラで、自分の第一声に驚く。
どうも暖房は付けたまま寝たみたいだけど、裸のまま布団を被ってるだけなので、布団から出した部分が寒い。
ふと、思い出す。
「服……」
裸のままベッドを飛び出し、洋服をしまってあるタンスの一番下の段、その一番奥から、彼の部屋着を取り出した。もちろん自分の部屋着も。
とりあえず彼に背を向けたまま自分のそれを着て、彼にもそれを手渡す。
「……どうぞ。これ、秀一さんのだから」
「ああ……そうだったな……」
「なんか捨てられなくって……」
「そうか……」
服を着て、とりあえず喉を潤し、二人並んでベッドの端に腰掛ける。現在の時刻は、普段起きるくらいの時間。
「メシでも食うか……それとも風呂が先か」
「……お腹空いたし私作ります」
「俺も手伝う」
「いいですよ……寝ててください」
「俺はな、あれから料理はだいぶ得意になったんだぞ」
「えっ!?」
あの包丁の使い方も微妙だった彼が。料理が得意だと……?
半信半疑の中二人でキッチンに立てば……彼は言葉通り手際よく食材の下拵えを始めた。へえ……
「実はね、私も最近まともに料理するようになったんですよ」
「そのようだな。冷蔵庫の中を見て思った」
「あの時は料理なんてほとんどしてなかったもんなぁ……」
「信じられんな、あの時は簡単な家庭料理に二人がかりで数時間も掛かったんだぞ」
「でしたね……よく覚えてますね」
「大抵の事は覚えている」
……なんだか、彼と普通に喋れている。“昴さん=秀一さん”という概念にもすっかり慣れてきた。
あっという間に出来上がった朝食をテーブルで向かい合って食べていても、なんと言うか……自然。昔から一緒に居たかのような居心地の良さがある。