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恋のはじめかた【名探偵コナンR18】

第12章 密会は堂々と行われる


心臓が止まるかと思った。仕事相手に突然キスされるなんて未知の経験だ。いや正確には、過去に身体を重ねた相手でもあるのだけれども……


ゆっくりと唇が離れて、また近付く。上唇を甘く食まれ、舌が入り込もうとしてくる。

……この感じ、絶対知ってる。

口内へ侵入を許してしまえば、舌同士が蕩けるように絡まり合って、解けては繋がり……次第に意識がフワフワとして……身体は完全に彼に反応し、熱を持ち出した。

このキスを、私は覚えてる……彼は、本当に昴さんなのだ。

だからって、どうしたらいい。


「どうやら……分かったようだな」

「は、い……」

「……ずっとこうして、触れたかった」


また頬を彼の指が滑り、唇が重なる。背中を強く抱かれて、胸が苦しい……

彼の唇も、匂いも、あの時と一緒だ。でも今の私は以前の私とは決定的に違う……零くんの存在だ。彼とこんなことしてる場合ではないのだ。

なのに。頭ではそう思ってるのに、身体は全く逆で……唇を重ねることを止められない……

やっとの思いで、彼の名前を口にする。


「っ、赤井さん……」

「呼ばれるなら“秀一”の方がいい…………」


顔を近付けたまま、目の前の彼が言う。ゾクりと背すじから脳ミソまで震えた気がした。あの時も、こんな風だった。魔法でもかけられたみたいに、彼に引き寄せられ、吸い込まれそうで……

それでもなんとか距離を取ろうと試みる。だけど再び唇は塞がれ、抱かれる腕にも力が入り、身動きも取れない。


ここで踏み留まって引き返すべきだ。

でもこの先におそらく待ってる、甘い甘い愉悦に浸ってしまいたい……

善い私と、悪い私が、頭の中でひたすら対峙を続けている。


「秀一さん……」

「そうだ……」


身体が不意に持ち上がって驚いていると、赤井さんの膝の上に乗せられて。向かい合ってもう隙間なんて無いくらい強く抱き締められた。

首すじに顔を埋められ、何度も軽く吸いながら唇を付けられる。


プツン……と、何かがちぎれた。


なんとか保っていた理性の壁が支えを失って、ボロボロと崩れていく。
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