第11章 安穏の白、走り出す緋。
結局、オーブンから香ばしい匂いがしてくるまで、零くんの拘束は続いた。
中途半端に甘い気分になってしまって、気付けばお腹が空いてる事も忘れてた。
だけどやっぱり美味しそうな食べ物を目の前にすれば、再び腹の虫が騒ぎ出す。
「いただきまーす!」「いただきます」
手を合わせて、食前の挨拶をする。
湯気が立ち上るグラタンをスプーンでつついて。小さめのひと口分を乗せて、フーフーと息を吹き掛ける。絶対熱いのは分かり切ってるのに……頬ばれば熱いやら美味しいやらで口の中が忙しい。
「あつっ……!でも、おいしーい……っ」
「うん。上手く出来たな」
ニコニコしながらグラタンを食べ進める零くんは、熱くないんだろうか。食べ方の問題なのか。私はやっとの思いで口の中を空にして、今度は野菜のたっぷり入ったスープを飲む。
「零くん!これも美味しい!野菜が美味しい!」
「やっぱり野菜は旬の時期に食べるのが一番美味しいよな」
たしかに、白菜、白カブ、ニンジン……よく見れば入ってるのはどれも本来寒い時期が旬の野菜ばかりだ。そこまで考えて零くんは食材買ってたのか。全然気付いてなかった。まだまだ私には勉強が足りないみたいだ。
あっという間にスープを飲み干し、ハフハフ苦戦しながらグラタンも食べ終えて、お腹いっぱい。
「ごちそうさまー……」「ごちそうさま」
「あー……美味しかったぁ……」
「と一緒に食べると尚更美味いよ」
「私も!零くんがいるとごはんも楽しい!」
立ち上がり食器を持って流しへ向かう。とりあえずグラタン皿を水に浸けて、洗い物をしようと袖を捲ってたら、また後ろから零くんの腕が回ってきた……
「零くん……?一緒に洗う?」
「後でいい」
「でも……」
「後で僕が洗うから。今は……」
首すじに顔を埋められて、軽く吸われた。一瞬硬直した身体も、舌を這わせられると力が抜けて柔らかくなっていく……
「皿洗いより気持ちいいことしたい」
「……っ、ん、ぁ……っ!」
彼は耳元で飛び切り甘く囁くと、私の手を取り自分の局部に持っていく。服の上から触れたソコはもう硬くなってて……どうしたらいいやら……
零くんが優しいのは出会った時から、今もだけど、もちろん優しいけど、最近こういう時の零くんってすごく意地悪だ……