第11章 安穏の白、走り出す緋。
トトトトトントン、トン……シャッ……ジャーーー……
スーパーに寄って食材を買い込み、零くんの家に帰って来て、二人でキッチンに立つ。
零くん、包丁捌きもフライパン捌きもお見事です……感心しながら私も手伝えることを隣でちまちまとやる。(最近料理の腕前は以前より遥かにマシになった筈)
「零くんめちゃくちゃ手際いいよね……」
「昔からヒロ達の分も作ってたからな……アイツら料理も掃除も洗濯も……ほとんどしなかったし」
「へえ……にしても上手すぎ」
「出来ないよりは出来た方が良いだろ?」
「まあ、うん」
「夫婦共働きなら家事は分担するべきだと思うし」
「最近よく言うよね……」
「一緒に住んだら家事はどうしたい?曜日制か、週替わりとか」
「うーん……基本は休みの方がして、二人とも仕事の日は交代にする、とか……?」
「二人とも休みの日は何もしないで外で食べるとかな」
一緒に住むとしたら、私の家より零くん家の方が圧倒的に広いし、零くんの所へ私が移動する形になりそう。
とは言ってもすぐに引っ越せるほど時間の余裕も無い。今は零くんの家に来る度、少しずつ私の荷物が増えていっている状況。
具材とソースを流し込んだ器にたっぷりチーズを乗せたグラタンをオーブンに入れて、あとはスープの味を仕上げて、グラタンが焼けるのを待つだけ。
「よし、こんな感じだな」
「早く食べたーい……お腹空いてきた」
オーブンを覗き込めば、ソースがフツフツし始めている。無意識にヨダレが出てくる。
「っえ?零くん?」
「なんかが可愛いくてつい……」
急に後ろから抱き締められて、身動きが取れない。
「ね、動けないんだけど……」
「なんでこんなに可愛いんだ?」
「……零くん頭おかしくなった?」
「に毒されておかしくなるんならそれも有りだな」
「もう……」
頭にキスをされてる気がする。ああ……誰かに見られてる訳でも無いけど恥ずかしい。なんで零くんはこんなセリフをスラスラ言えるんだろ……
「耳まで赤くなってきたな。可愛い」
「っぁ!……零くん……」
耳をハムっと唇に挟まれて、更にぎゅうっと抱き締められる。ちょっと苦しい。
「もー……」
「怒ってるも可愛い」
しばらく何を言ってもダメそうだ……