第11章 安穏の白、走り出す緋。
それからは至って普通のデートだ。少し遅めのランチを食べて、コーヒーを飲みながら、次の行き先を考える。
「は美術館か映画だったらどっちがいい?」
「……やってる内容次第かな」
「だな」
零くんがスマホでまず現在の東京の美術館の展示内容を検索する。その画面を斜め上から覗く。
「女の子はこういうの好きそうだよな」
「あっ!コレ!どっかの広告で見た!いいよねー!」
「じゃあココにするか」
「うん!」
超高級ジュエリーブランド所蔵の、宝石と美術品の展示会。都内の美術館で年末までやってるみたい。
別に宝石大好き!とかじゃないけど、やっぱり貴重な綺麗なモノは見てみたい。
コーヒーを少し急ぎ目に飲み干して、早速美術館に向かった。
展示会場に入れば、天井の高い広々とした空間の中央に、手のひらに収まる程の宝石が、透明なガラスケースに入れられ鎮座している。
駆け寄ってなるべく近くでじっと見つめる。綺麗なのは言うまでもない。堂々としてて、もの凄い存在感を放ってる。
「うわぁ……綺麗……」
「ここまでのものは僕も初めて見るな」
「怪盗キッドも狙ってたりしてね」
「さあ……中々厳重な警備体制だぞ?隙がない」
「やっぱり零くんは警備の仕方とか気になるの?」
「そりゃあ、多少はな……」
零くんは宝石よりも防犯システムの方に興味がありそうだ……まあいい。男の人ってそんなもんだろう。女性のしたい事に文句も言わず付き合ってくれてるだけでもきっと良い方だ。
「すごーい!」「へえ……」
大粒の宝石が数え切れない程散りばめられた首飾りに、宝石を贅沢に使用したオブジェとか……ほんと、贅の極みだ。
ゆっくり時間を掛けて館内を回った。
「はどれが一番良かった?」
「……あれかな。一番最初に見た大っきい宝石。なんか吸い込まれそうだった」
「じゃあ自分が身に着けるとしたらどれだ?」
「待って……あんな豪華なの……恐ろしい」
「シンプルな方が好きか」
「着けるならそうだね。零くんは?」
「僕は……あのカラクリみたいな仕掛けのやつかな」
「ああ!あれも面白かったねー」
最近日が暮れるのがめっきり早くなった。外に出ると空はもう夜になり始めてた。
「今日はいっぱい歩いたもんな……夜はウチでゆっくりするか」