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恋のはじめかた【名探偵コナンR18】

第11章 安穏の白、走り出す緋。


「……いや、もう終わりだ」

「えっ?」

「ヒロの墓は無いんだ」

「あ……ごめん」

「謝らなくていい。墓があるのが普通だもんな」


ヒロくんって言うのは、例の組織へ潜入中に正体が警察官だとバレて、赤井さんに追い詰められ自決したって人……零くんの一番の親友。

捜査官が潜入先で死亡した場合、家族にも友人にもその死が知らされない事はよくあるみたいで……遺体は家族の元にも届かず、つまりお墓も無いってことらしい。


「ヒロには心の中で挨拶してくれればいい」

「うん……」


走り出した車の中、しばらく互いに何も言わず黙り込んだ。

別に、お墓参りだけが重要な訳じゃないと思う。形式があるからそうしてるだけで。こうやって思い出して、悼んだり懐かしんだりすることの方が、きっと大事だ……

目を閉じて、写真で見たヒロくんの顔を思い浮かべる。零くんは、何て声を掛けてるんだろうか。


「……零くんってお墓でいつも喋ってるの?」

「最近は喋ってるかもな。変か?」

「変ではないけど……」

「……潜入してた頃も、墓参りは行ってたんだ。でも万が一知り合いに見られたらマズいだろ?僕は降谷じゃなかったし。だからほとんど通り過ぎるくらいで済ませてた……今ならしっかり向き合って言いたい事も言えるしな」

「そっか……」

「……堂々と墓参りもできない、死んでも墓に入れない仕事って、どうかしてるよな」

「でも……必要な仕事でしょ?」

「悪い人間がいる限りは」

「……いなくならないだろうけどね」

「残念ながらそうだな……だから警察や法律が必要なんだ。僕らは戦って、守り続ける……」


零くんの顔付きと声色が、ぐっと凛々しくなった。

お父さん、お母さん、どこかで見てますか。私の彼氏は、本当に素晴らしい人です……


「私も自分にできること頑張ろ……まず零くんの足元にも及ばないけどね」

「……は十分やってるだろ。僕はって、大らかな中にちゃんと強い芯があって……すごくいいと思う」

「そう……?ありがとう」

「でも、はすぐ自分を卑下するだろ。もっと自信持てばいいのに」

「自信なんてないもん」

「僕は認めてる。は素晴らしい女性だ」


褒められすぎるとフワフワして落ち着かない。
話題を切り替えて、平常心を保った。
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