第11章 安穏の白、走り出す緋。
その日の夜は、零くんとご飯だけ外で食べて、家まで送ってもらい、別れた。寂しい気持ちはあるものの、明日もお互い仕事だし……
寝る支度を済ませた頃、突然見知らぬ長い番号からスマホに電話が掛かってきて、驚く。よく見ればアメリカからと表示されている。FBIの人?恐る恐る出てみる。
「もしもし……」
「夜分にすまない、赤井だ。さんだな?」
「あ、赤井さん!はい、です。こんばんは、いや、こんにちは」
「先日は世話になった。ちゃんと礼も言えず、すまなかったな」
「いえ!赤井さんはお忙しいでしょうし……こちらこそ色々お世話になりました」
「まあ挨拶はさて置きだ。テロ事件の犯人が逮捕できたのは知っているな?」
「はい!本当に良かったです!」
「ああ。犯人の供述とと爆発物の詳細なデータだが、欲しいんだよな?そちらに送りたいんだが、生憎電話番号しか分からんもんでね」
「欲しいです!電子メールのアドレスでいいですか?でもメールでそういうのって送っていいんです……?」
「こちらは構わん。パッと見はそれと分からんような状態で、俺かボスの私用のアドレスから送る」
「分かりました」
私のアドレスを口頭で教える。
やっぱり赤井さんの声って電話だと少し冷たく聞こえる。あまり抑揚のない落ち着いた喋り方だからか。
「……、ところでなんで赤井さん、私の番号知ってるんです?」
「ボスに聞いたんだが」
「そうでしたか。ではジェイムズさんにもよろしくお伝えください!」
「ああ。それと最後に……」
「はい?」
「来月だな。東京に用があるんだが……今回の礼も兼ねて食事でもどうだ?」
「はい!じゃあ水野先生にも伝えておきます!」
「ドクター水野か……俺はさんと二人で、のつもりだったんだが」
「それは……」
「礼をしたいのは勿論だが、実は先日の事で君にしか話せない要件ができた。今回はドクター抜きでお願いしたい」
「……電話じゃ、言えないことですか?」
「ああ言えんな。また近いうち連絡する。夜遅く悪かった。ゆっくり休んでくれ」
「は、はい……」
これって断れないんだろうか。それに、水野先生には言えない要件って何?仕事や能力に纏わる話なら、聞くべきか。
だけど零くんの大っ嫌いな人と二人で食事なんて……