第11章 安穏の白、走り出す緋。
零くんにひと通りの説明をし終え、二杯目のコーヒーを作りに席を立つ。
「なあ、ちなみにはどんなタイプなんだ?」
「私?私は……」
新しいコーヒーをテーブルに置き、精神分析について書かれた本をパラパラめくり。私のタイプのページを広げる。
「これ。自分で言うのもアレだけど結構当てはまってると思う」
「へえ……ああ、っぽい。この仕事も向いてるみたいだな」
「そうなの。ちょっと嬉しいんだよねー」
そこでパーテーションの向こうから水野先生が割り込んできた。
「と降谷さんのタイプは、相性も良いはずだぞ!」
「えっ!そうでしたっけ!」
たしかに分析結果を元に、相性の良いタイプ、悪いタイプっていうのも分かってくるのだけど……そうか、私と一番相性の良いタイプは……そっか。相性の事なんて全く頭になかった。
「まあ理論上の話だがな……二人の思考パターンはハッキリ言って真反対だぞ、しかしタッグを組めば、お互いを高め合える、いい関係になれる組み合わせだ」
「ほんとだ……」
「1+1が3にも4にもなるってことですね」
「そういうことだ」
まさか先生って最初からこのことも頭にあって私と零くんをくっつけようとしてた……?考えすぎか。
でも、ふと零くんの顔を見ると、なんだか難しそうな顔をしてる。
「どうかした?零くん」
「いや、本当に良く出来たテストだなって……でも例えば僕が違う人物になり切って受けたら、結果は変わるのか?」
「変わるんじゃない?同じ人が五年後には違うタイプになってる例も実際あるし」
「そうか……そうだよな……ごめん。実は心理テストなんてあんまりアテにならないだろって思ってたけど……これは受けてよかったよ」
「だって私達これで仕事してるんだもん、その辺の心理テストと一緒にされたら困るって」
「だからごめんって言ってるじゃないか」
「別に怒ってない」
「顔は怒ってるぞ?」
「怒ってない!」
「まあまあ、二人とも、仲良くな?せっかく最高の相性のカップルなんだ」
「……はい」
「ええ。すみませんでした」
先生に間に入られ、零くんとぎこちなく目が合い。声を出さずに笑い合った。なんかこういうの、くすぐったい。