第11章 安穏の白、走り出す緋。
午後になり。零くんが研究室にやってきて、早速テストを実施した。結果は……ほぼほぼ予想通り。
人を惹きつけるカリスマ性、決断力も行動力もあって、合理的……まあ所謂“能力の高い人”に多く、会社や組織のトップに立つのに向いてる性格。
その代わり大事な目的の為なら家族や友人も犠牲にできる薄情なタイプでもある。仕事では大成功するかもしれないけど、人間関係はボロボロってこともありがち。
人口比率的には極めて少ない性格。やっぱり零くんってすごい人だよな、って思う反面、恋人としては大喜びできない結果でもある。
私が結果を零くんに伝えていく。(水野先生は今日も少し離れた所から聞いているだけ)
「人気者のリーダー気質のタイプだね」
「へえ……」
「珍しいタイプなんだけど、新進気鋭の起業家とか、組織の革新的なトップには、このタイプの人が多いみたい」
「うん」
「ただこのタイプって、人間関係築くのは不得手な人が多いんだけどさ、そこに関しては零くんはちょっと違うと思うんだよね……」
「いや……違わない。そういうのは元々得意じゃない」
「ウソ?そんな風に見えない」
「他人と円滑な人間関係を築くにはどう振る舞えばいいかを覚えただけだ……良く出来たテストだな」
「なるほどね……じゃあその部分は問題ないとして……」
どんなに有能な人だって、一人きりでは生きていけない。自分以外の人間も大事にすべきなのだ。でも零くんはその点は大丈夫そう……
「心配事を人に話せないタイプとも言われるけど……」
「それはや水野先生がいるから問題ない」
「じゃあ……仕事にのめり込み過ぎることは?」
「それは大いに有り得るな」
「うん、バリバリ働くのもカッコイイけど、働きすぎて家庭とか友達とか他の大事なものを疎かにしないように気を付けて……って私が言うのも変だよね」
「カウンセラーとして言ってくれてるんだろ?」
「うん……」
おそらく、零くんにとって最優先したいのは“愛”より“仕事”だろう。薄々分かってたことだけど、テスト結果にそれを裏付けられたような感じだ。
仕事に対する零くんの姿勢は尊敬できるし、素敵だと思う。
けどもし彼がこの先また長期で危険な仕事をするとなったら……私は邪魔になったりしないだろうか?その時も傍で見守らせてくれるだろうか。