第10章 気分は上々……
「急ぎたい訳じゃないけど、いつかそのうち、一緒に住まないか?」
「……零くんと私が、一緒に……?」
「僕ら休みも中々合わないだろ?一緒に住んだ方が何かといいかなって思って」
「うん、いいかも……考えとく」
“結婚する前に一度同棲した方がいい”とか、“同棲すると相手の嫌な所も見えてくる”とか、どこかで聞いたフレーズが頭を過ぎる。
料理が不得手なのもズボラなのも、一緒に住んだら全て知られちゃうんだから私の調理技術向上は急務だ……
そんな事を考えてたら今になって明日の朝食が何も無いことに気付く。
「どうしよう、明日朝食べるもの何も無いや……」
「旅行帰りだもんな、無いよな」
「ごめん、すっかり忘れてた」
「少し早起きして喫茶店かファミレスでも行くか?」
「いいね!そうしよっか」
……助かった。とてもじゃないけどこの前零くんが作ってくれた、旅館の朝食みたいなものは私には用意できないもん……
零くんと居ると時間が経つのが早い。あっという間に夜中になり、電気を消して、広くないベッドに零くんと二人で横になって布団に包まる。近頃夜は結構寒くなってきたから、隣の温もりがすごく嬉しい。
「零くんあったかーい……」
「もな」
「んー……おやすみ」
「……寝るのか?」
「っん……」
唇と唇が触れ合う。でも“おやすみのキス”にしてはやけに濃くて長い……そう思った瞬間、角度を変えて再び唇が重なる。上唇を軽く吸われたと思えば舌が侵入してきた。
キスを繰り返す内に頭がぽーっとしてきて、さっきまでは少し肌寒かった筈なのにいつの間にか身体も熱い。
顔を近付けたまま、零くんに問われる。
「……もう眠たい?」
「なんか……眠たくなくなった、かも」
小さくフフっと笑われて、また唇が触れて……肌を撫で始めた彼の手に逆らうことなく、そのままもう一度だけ身体を合わせてから、眠りに就いた。