第10章 気分は上々……
ピザとサラダ、フライの盛り合わせが到着し、テーブルの上に広げる。それをパクパク摘みながらも、零くんとの会話は止むことはない。
私の脳ミソにはこの一か月で“降谷零”という人物に纏わる情報が山程インプットされたと思う。
その代わり、“あの彼”の記憶は少しずつ薄れていってるんだろうか。
「犯人がその場から逃げたんだ……」
「えっ……」
「でも僕がソイツを追跡してちゃんと取り押さえた。縛ってそこから動けないようにして警察に通報して……」
「えっ?零くんが逮捕するんじゃないの?」
「僕はその時潜入中の身で“降谷”じゃなかったから。悪い奴は許せないけど、面倒に巻き込まれるのは御免だった」
「あー、なるほど」
たまに零くんがしてくれる、彼の警察官っぽいエピソードは結構面白い。私からしたら非日常っていうか、ドラマみたいな話だからかな。
それにそういう話してる時の零くんって、目が輝いてるのだ。ほんと、彼は警察官になるべくしてなった人なのかもしれない。
「そうだ、明日のテストって何するんだ?」
「うーん……まあ、質問攻めに合うから、とにかく直感で答えてもらって」
「ふーん……」
「それで零くんの基本的な性格のタイプが出てくるのね、その結果を一緒に見て、自分の性格を客観的に知ってもらって、辛い時とか困った時とか、どういう対処法が有効かを考えてくの」
「一番の対処法はだって、もう分かってるけどな」
「……それは最終手段ね」
「ああ……でも……もしそのと、毎日会うとしたら、どうなる?」
「毎日?」
「そう。例えば、一緒に住むとか」
「うーん……居て当たり前の存在になっちゃったら、対処法としての効果は低くなるのかもね」
「だけどきっと毎日気分はいいぞ。がアメリカ行ってる間にさ……色々考えたんだ」
「うん?」
「無理して時間作ってまで会わなくてもいいって思ってたけど、一緒に住んでしまえば無理しなくても毎日会えるだろ?」
「……そうだね」
“同棲”の二文字か頭をグルグル飛び交う。誰かと一緒に住むなんて……考えたこと無かった。