第10章 気分は上々……
翌朝、零くんの隣で目が覚める。彼も今起きたようで、少し掠れた声で朝の挨拶を交わし、唇が触れ合うだけのキスをした。
一緒に起き上がろうとする彼をなんとか制し、一人ベッドから出て朝の支度を始める。洗濯機を回しながら歯磨きして、シャワーして……
ひと段落して、ベッド際にそろりと戻る私の手にはスマートフォン。零くんの寝顔でも撮ってやろうって魂胆だ。
カメラを起動して、スマホ越しに零くんの顔を覗く。
目を閉じてても綺麗な顔だ……ちょっと可愛い。なんか、触りたくなる。
狙いを定めて、画面をタップした。でもシャッター音が響いたその瞬間、零くんの目がパチッと開いた。
「撮ったな?」
「撮ったよ?……っきゃ!」
妖しく笑う零くんに無理やり腕を引かれベッドに倒れ込む。パっとスマホを取り上げられてしまい、取り返そうとバタバタしてると……どうやらカメラがインカメラに切り替えられた模様。画面に写っているのは、零くんと私だ。
「えっ?ちょっと!」
「、ちゃんと見て」
カシャ、と写真を撮られて、スマホを返された。
「はい。僕のにも送ってよ」
「ええぇ……」
渡されたスマホを両手で持ち、渋々撮影された写真を確認すると……楽しそうに笑ってる零くん、それはいいんだけど、隣の私の顔は間抜け顔だ。
「コレやだ!撮り直す!」
もう一度カメラを起動して、まだまともに見れる写真を撮って、零くんに送信した。
二人とも支度を済ませて、家を出る。朝食を喫茶店で取り、このまま一緒に研究室へ向かえれば楽なんだけど、生憎午前中は別の用事が入っている為、零くんとは大学前で一度お別れとなる。
人の多い校門前、ただでさえ目立つ白い車の中で短いキスをして、車を降りた。我ながら恥ずかしい事をしたものだ。水野先生は見てないよな……と周りを確認して、校内へ入った。