第2章 恋はまだ始まらない
「降谷さん……お気遣いありがとうございます。の機嫌が良いと俺も助かるんでね」
「いつもはあまり休憩ってしなかったですか?」
「ないですね。は能力を使ってても傍から見れば何もしてないように見えるでしょう?本人は相当疲れてるんですが周りは中々そうは思ってくれんみたいで」
「そうでしたか……それはすみませんでした。次にご協力をお願いする時からは適度に休憩を挟むよう指示しておきます」
「そうしてもらえると有り難いです。こんな事仰ってくれたのは降谷さんが初めてですよ」
「うんうん!降谷さんって神様ですか?」
「まさか。僕はただの人間ですよ……おや、電話です。少し外します」
降谷さんはスマホを片手にラウンジを出ていった。
水野先生と二人になり、なんとなく気が緩む。
「どうだ?、彼、中々いい男じゃないか?」
「……たしかにそうですけど。いい男っていうより素敵な人すぎて私なんてまず相手にされなさそうですよね」
「それはやってみんと分からんだろ」
「そうですかー?」
「よし!じゃ、まずはお友達からだな」
「……まあ仲良くしといて悪いことはなさそうですよね、あの人が何考えてるのかとかすっごい興味あるし」
「そうそう。まずは相手を知ることからだなー」
降谷さんは、いい人、素敵な人だとは思う。彼の心の中にも興味はある。でもそれが恋愛感情に結び付くとは思えない。
まあどうなるにせよ先生の言う通り“まずは相手を知ることから”なんだろう。先生もなんか嬉しそうな顔してるんだし、“嫌だ”とも言えない。
そのうち降谷さんも戻ってきて、ティーカップの中身も空になり。
次の場所へ移ってまた能力を使い……幸い遺体を見ることは一度もなく、今日の仕事は終了し、大学まで送ってもらう。
「明日と明後日も降谷さんが来てくれるんですよね?」
「ええ。その予定ですけど?」
「よかったー!じゃあ、明日もよろしくお願いします!」
「はい。こちらこそお願いします。では、失礼しますね」