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【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集

第5章 ※どこまでも堕ちる 一郎


「い、一兄…っ」
「最近全然お前に触れてねぇから…そろそろ充電させてくれ」
「んっ…ここ、リビング…」


ちゅっ、ちゅっ、と頬から首筋へと唇を移動させ、がっちりと肩を抱きながらも反対の手が服の裾から侵入する。するすると肌を撫でられる感触に、ゾワッと背筋を何かが駆け巡る。


顔を一兄の方へと向けさせられ優しく唇を啄まれれば、私の唇は自然と開き舌を迎え入れる。舌を吸われ、ねっとりと舐め上げられる気持ちよさに体を委ねそうになるが、ふと、彼の顔が思い浮かんだ。


「……っ、やだ!!」


力いっぱい一兄の体を押し返し、私はそのままバタバタと階段を上って自分の部屋へと戻った。


布団に潜り込み、もしかしたら一兄が部屋にやってくるんじゃないかとしばらく身構えていたのだが、1時間経っても一兄が部屋にやってくる様子はなかった。ホッと息をつき、安心して瞳を閉じる。


これで一兄も、目が覚めたのかもしれない。私たちは兄妹で、ああいうことをする関係じゃないってことに気づいたのだろう。少しずつ、元の関係に戻れるといいな…。



___なんて、このとき私は浅く考えていた。一度壊れてしまったものが、そう簡単に元どおりになるわけなんてあるはずがないのに。









「今日はありがとう!楽しかった」
「こちらこそ送ってくれてありがとう。気をつけて帰ってね」


週末、遊園地の帰り。彼に家の前まで送ってもらい、私は笑顔で彼に手を振った。すると、いつもならすぐに帰る彼が少し辺りを見渡してグッと私と距離を詰めた。突然のことに何も反応できなかったが、彼がふんわりと私の髪の毛を耳にかけジッと熱い視線を送ってくる。
 

あー、キス、するのかな。なんて、酷く察しのいい私は軽く微笑んで瞳を閉じた。少し魔を置いて、軽く触れ合う唇。舌なんてもちろん入ることもなく、彼の体はすぐに離れた。


「……あー、結構照れる、な」
「そ、そう、だね」
「…ごめん、家の前でしちゃって。なんか、どうしてもしたくなっちゃって」


真っ赤な顔した彼は頭をわしゃわしゃと掻き、それじゃ、また学校でね、と言い残して歩いて行った。私はその背中を最後まで見送ってから、家のドアを開く。


「…あれ、鍵かかってな__」


私がドアを開くよりも先に内側からドアが開き、驚いて顔を上げるとヒュッと私の喉奥が詰まった。
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