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【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集

第5章 ※どこまでも堕ちる 一郎


まさかの告白に、思わず大きな声が出る。彼の真剣な眼差しを見るに、冗談ではなさそうだ。


「前からすごい可愛いなって思ってたんだけど…委員会で一緒になってから、たまに喋ったりするようになって…その、好きになっちゃったというか…」


ああ、そうか。どこかで見たことがあるなぁと思ったのは委員会が一緒だったからか。 ポリポリと照れたように頬を掻く彼の目の下に、ふと、一兄と同じ黒子があることに気づいた。それが不思議と、一兄を彷彿させる。


「…いいよ」
「だよな…まずは友達から…って、え?い、いいよって言った?今」
「うん。私も実は、優しいなぁって思って気になってたんだ」
「ええええ!?まじ!?うわ、やばっ…超嬉しい…」


顔を真っ赤にして口元を押さえる彼に、嘘をついてしまった罪悪感で胸が一杯になる。でも、もしかしたら、本当に彼のことを好きになれるかもしれない。一兄のことを、忘れられるかもしれない。


「これからよろしくね」


そんな綺麗でもなんでもない期待を胸に、私は彼の言葉に頷いた。



彼との時間は、思いの外楽しくて。放課後にカフェに寄ったり、図書館で勉強したり、夜遅くまで電話したり。普通の恋人が送るような毎日に、私は少しずつ幸せを感じるようになっていった。



山田家では、スケジュールを共有するためのカレンダーがリビングに置いてある。放課後の予定まで詳しく書く必要はないのだが、休日に出かけるとなると家事分担の関係とかもあってさすがに書かないといけない。土曜日に遊園地に行くことになり、私はルンルン気分でカレンダーに"お出かけ"と記した。

「どっか出かけんのか?」
「わっ…!?びっくりしたぁ…ちょっと、友達と遊園地に行ってくるね」
「ふーん、そっか。俺この日休みなんだけどな」

 後ろから一兄がひょこっと顔を覗かせ、耳元で囁いたので肩がビクリと跳ねる。ペンを片付けるフリをして少し距離を取りつつ、私はあまり一兄の顔を見ないように答えた。

「そうなんだ。久しぶりのお休みじゃない?しっかり体休めてね」
「…と2人で過ごしたかったんだけどな、ほんとは」


気がついた時には一兄に背後から抱き竦められていて、柔く耳を甘噛みされる。ひゃっ…と変な声が出そうになるのを、手のひらで必死に口元を押さえて殺した。
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