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【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集

第5章 ※どこまでも堕ちる 一郎


「…いいか?」

それには言葉で返さず、目をきつく閉じて一度だけ縦に首を振った。一兄が微笑んだのが気配で分かって、ゆるゆると腹を撫でていた手が上がってくる。


そこからはもう、一兄に身も心もただドロドロに溶かされるだけだった。





「好き…って、なんだろ」

ぽつり、と呟けば一緒にお昼を食べていた友達が私の顔をバッと見つめる。

「なに!?恋!?したの!?」
「それがよく、分からなくて」
「え〜の恋バナとか超新鮮!とりあえず話してみなよ!」
「うーん…えっと、付き合ってるわけじゃないけど、その…なんていうか、色々しちゃってる人がいるんだけど…」
「えええええええ!?」


驚きの大合唱に、私は「しー!」と宥めるように人差し指を唇に当てる。友達も慌てて口をつぐみ、続けて、とでもいうようにコクコク首を縦に振った。


「そ、それでね。私、別にその人のこと恋愛的に好きとか思ったことは今まで1回もないんだよね。でも、この前女の人と歩いてるの見てすごい、心がモヤッとして…」
「あー、それはもう好きだわ」
「他の女と一緒にいて嫌だなって思ったら、それはきっと好きってことだよ。だって今までだったらそんな風に思わないでしょ?」


この関係になる前だったら…確かに、一兄がとられたみたいで寂しい気持ちはあったかもしれないけど、嫌だとは思わなかったかもしれない。


「え、じゃあ私…その人のこと、好き、なのかな?」
「うんうん、そうだと思うよ」
「ちゃんと好きって伝えて、恋人同士になりな?体だけの関係って、なんかすごい虚しいよ」


思い返せば、一兄は私のことを好きだとちゃんと伝えてくれている。私はそれになにも答えれないでいて…一兄はどんな思いをしていたのだろうか。


「…うん、そうだね。今日ちゃんと伝えてみる!」
「うん!頑張れ!…それにしても、がまさかそんなに進んでだなんてねぇ」
「そーそー!もっと詳しい話聞かせてよ」
「え、ええ?それは嫌だよ恥ずかしいもん」


一兄への気持ちがはっきりして、私の心は晴れやかだった。今日、帰ったらすぐ一兄に好きだと伝えよう。血の繋がった兄弟であることもこの時だけは忘れて、私は普通に恋する乙女のように胸を弾ませていた。
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