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【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集

第5章 ※どこまでも堕ちる 一郎


「…あれ、一兄?」
「……?」


学校からの帰り道、ばったりと出くわしたのは女の人と腕を組みながら歩いてくる一兄で。


「一郎くんの妹さん?」
「あ、えっと…まぁ、そっすね」
「…初めまして、山田です」


軽く会釈をすると、可愛い〜!と声を上げながらさらに一兄に密着する女の人。それを見て、なんだかモヤッとしたものが胸を支配する。


一兄、彼女できたの…?私のこと好きって言ってくれたのに…。


あれからも何度か体を重ねたというのに、本当は一兄の心はこの人にあるのだろうか。そんな考えが頭をぐるぐる駆け回っていると、一兄が私の横を通り過ぎるときに肩をポンと叩いた。


「事情は後で説明すっから、真っ直ぐ家に帰れよ?」
「…分かった」


事情…?なんのことかとても気になったが、その場は素直に頷き、言葉の通り真っ直ぐ家へと向かった。





その日の夜、一兄に部屋に呼ばれて行ってみるとベッドに腰掛けた一兄がポンポンと隣を叩いた。少し引っ付くように、そっと座る。


「今日俺が一緒にいた人は、ただの依頼人だからな」
「依頼ってどんな?」
「元彼がストーカー気質になってんだと。だから、俺が新しい男のフリしてるってわけだ。フリって言っても、ああやって腕組んで仕事場と家を往復してるだけだし、が怪しむようなことはなんもしてねぇからな?」
「べっ、別に私は怪しむなんて…っ」


反論しようとして顔を一兄の方に向けたとき、髪の毛をその大きな手で絡めとられて気が付いたら唇が重なっていた。無防備な唇の隙間を熱い舌が捻り込まれ、あっという間に私の舌を見つけ出す。じゅっ…とゆっくり舌を吸われ、私の息はすでに絶え絶えだった。


「……ん、はっ」
「今日の、すっげぇ可愛かった。ヤキモチ妬いてたろ?」
「や、きも…ち?」
「眉間にしわ寄せてさ、ムッて唇尖らせんの昔から機嫌悪ぃときの癖だろ。あんとき抱き締めて頭よしよししてやるの我慢すんの、大変だったんだからな」


一兄はそう言いながら、私にキスを落としつつ優しく頭を撫でる。それだけで私の力は抜けて、もう全身の力を一兄に委ねきっていた。そのまま私の体をベッドに横たえ、ギシッとスプリングを鳴らしながら一兄が私の上に馬乗りになる。すりすりと腹を撫で、耳元に唇を寄せる。
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