【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集
第4章 ※愛しているのに 銃兎
急に大声を出したからなのか、銃兎の肩がわずかにぴくりと跳ねる。1度出てしまった言葉は、なかなか止まってはくれない。
「だから…銃兎は別に私と一生一緒にいたいと思ってくれてはないのかな、とか、他の人と結婚した方がいいのかな、とか…ぐちゃぐちゃ考えちゃって…それでお見合いに行ったの。でも……」
そこで言葉に詰まり、グイッと顔の涙を拭った。
「結局、私には銃兎しかいないんだって思い知っただけだった…。私が…私が心の底から愛してるのは…っ」
『銃兎だけ』そう言おうとしたとき、ガタンッと椅子が動く音が聞こえ、次の瞬間には暖かな温もりに包まれていた。
「…っすまない、がそんなに思い詰めてたことに気付けなくて」
優しく背を撫でられ、私も思わず銃兎の肩に顔を押し付けわんわんと泣く。服が涙と鼻水で濡れるのも構わず、宥めるように背中を撫でてくれた。
「……俺はと結婚したくないわけじゃない。むしろ逆だ」
「逆…?」
少し待っててくれ、と私を座らせてから部屋を出て行き、数分後に小さな箱を持って戻ってきた。銃兎が目の前に跪きその箱を開けると、中からはキラキラと輝く指輪が。口に手を当て目を見開く。
「え、う、嘘…嘘でしょ?」
「嘘じゃない。今度の休みにレストランでプロポーズしようと思ってたんだよ」
こういう形にはなっちまったけどな、と私の左手を取り指輪を嵌める。ピッタリと収まり、まるでそれは最初からそこにあったかのようで。ボロボロっと涙が溢れ、手の上に雫が落ちる。
「俺と、結婚してくれるか?」
「もちっ……もちろん…っ、愛してる銃兎…!!」
ガバッと首元に抱きつくと、銃兎も背中に手を回して強く抱きしめてくれた。まさか銃兎がプロポーズしようとしてくれていたなんて…。計画を台無しにしてしまって申し訳ない気持ちもあったが、今はそれよりも幸せで心はいっぱいだった。
「…けどな、俺はお前がお見合いに行ったことについては怒ってるんだぞ?」
「へっ?」
体を離して間抜けな声を出せば、にっこりと微笑む銃兎。
「お仕置きだな」
「え、まっ、お仕置きって…わっ!」
そのまま抱え上げられて真っ直ぐ寝室の方へと向かう。新婚初夜…なんて甘い雰囲気じゃなさそうなのは、銃兎の顔を見れば明らかだった。