【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集
第4章 ※愛しているのに 銃兎
そう思って、古典的だがゼ○シィの雑誌をこれ見よがしに机の上に置いてみたり、テレビ番組も結婚生活などを特集しているものを銃兎がいるときに付けてみたりなど、さりげなくアピールを続けてみた。なのに、やっぱりそう言う話が全く出なくて。なんなら避けられている、とまで感じてくるようになった。考えすぎなのかもしれないけど。
「もうここまでくると、結婚したくないのかよってなっちゃうよね…」
はぁ…と昼休憩中、手作りのお弁当を食べながら資料を見ていると、ポケットに入れていた携帯がブブブッと振動した。確認してみると母からの着信で、急になんだろうかと訝しながらも画面をスライドする。
「もしもし」
「久しぶりね、元気にしてた?」
「元気だよ。…え、娘の体調聞くためだけに電話したの?」
「そんなわけないでしょ。急なんだけど、ちょっとお見合いしてみない?」
「…っんぐ、ゲホゲホッ…お、お見合いぃ?」
お茶が変なところに入ってしまい、盛大にむせる。まさか母からそんな言葉を聞くことになるとは。
「あのね…私が銃兎と付き合ってるの知ってるでしょ?」
「そうなんだけど…ほら、お隣の田中さんに息子がいたでしょ?小さい頃あんたもよく遊んでたじゃない」
「あー…」
子供の頃遊んでいた記憶がぼやぁ…と頭の中に浮かぶ。確か県外の中学に行くのに合わせて家を出て行ったから、会うことなかったんだっけ。
「それで田中さんがにうちの息子なんかどうだ〜って言ってくるもんだから、私もそうねぇなんて返しちゃって」
「なんでそこで、そうねぇって返しちゃうのよ…」
「だって…と銃兎くん、付き合って長いのに全然結婚の気配がしないじゃない」
母に思いっきり傷口を抉られ、不意打ちのアッパーカットでも食らったような気分に陥る。
「だからちょっと、気分転換にでもお見合いしてみなさいよ!」
「気分転換にお見合いって聞いたことないし」
「もしかしたら銃兎くんよりもいい人かもしれないわよ?」
「お母さんは私と銃兎を別れさせたいの?」
「そういうことじゃないけど…早く娘のウェディングドレス姿見たいのよ。孫だって欲しいしねぇ。あんただってもういい年なんだから、今のままでいいのかちゃんと考えなさい?」
「年って…私まだ29なんだけど」