【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集
第4章 ※愛しているのに 銃兎
「……あ」
郵便物の中から見つけたハガキ。それは高校の時の同級生からの、結婚式への招待状だった。もう何人目だろう。自分と同い年の子が結婚したのは。子供が生まれました、と嬉しそうに報告をされるのは。
私にだって相手がいないわけではない。今年で付き合って5年、同棲して3年が経とうとしている男がちゃんといるのだ。ただ、結婚のけの字すら出てこないだけの話で。
プロポーズされたい、なんて乙女チックな考えを持ち続けてきたが、どうもそう悠長にしているわけにもいかなさそうだ。
「…ねぇ、銃兎」
「どうした?」
「また結婚式の招待状届いちゃった」
「あー…最近多いな。出席するのか?」
「ううん。卒業して以来この子と会ってないし」
サラサラ、とボールペンで欠席に丸をし、簡単な理由と祝辞を述べて不必要な部分に線を引いた。銃兎はその様子を、少し離れたソファからなんとなしに見つめている。
「やっぱり、年齢的にも30歳になるまでに結婚したいものなのかなぁ」
「…どうなんだろうな。はしたいのか?」
何気なく発せられた言葉に、心臓がドクンと音を立てる。
「私も……30までにはしたいって、考えてるよ」
「……ふーん、そうか」
思わず、え?と声に出してしまいそうになった。銃兎はそれっきりコーヒーを一口含み、PCに向かいっぱなしになってしまった。
え、待って待って?なんで他人事みたいな態度取ってるの?結婚って、私と銃兎がするもんじゃないの?
「あ、来週の休みって予定入ってるか?」
「……っあ、え?いや、入ってないけど」
「じゃあ久しぶりに飯でも行こう。ちゃんと空けとけよ」
「うん…」
半分フリーズ状態で生返事を返し、私はとりあえず目の前にある郵便物を整理した。
銃兎は、私と結婚する気などないのだろうか。いや、もはや結婚自体興味がないのかもしれない。私は銃兎と一緒にいれたらそれでいい、その気持ちに間違いはない。でも…やっぱり、結婚という目に見える契約が欲しいのも事実で。
私は、銃兎のことを愛しているからこそ家族になりたいのだ。