【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集
第3章 ※心と身体の距離 帝統
驚いたように目を見開いているのが分かる。
「……もう、けじめついたのか?」
「…うん。私、帝統にちゃんと言う。ちゃんと別れる」
「そうか…なぁ、もう1回してもいいか?」
「ん…」
今度は彼が私の後頭部に手を添え、唇を重ねられる。そっと優しく隙間から舌が割入ってきた。しばらく控えめな水音が響いていたが、ちゅっとリップ音を鳴らして彼の顔が離れる。そして一度ギュッと抱きしめ、ゆっくりと体を離した。
「……悪い、こんな道で」
「あっ、いや、私からしちゃったし…」
「止まらなくなりそうだから、もう帰るわ」
「う、うん、分かった…」
てっきり家に上がるかと思っていたので拍子抜けしてしまった。けど、私がしっかり帝統と別れるまでしないつもりなのだろう。彼はまた振り返り、今度こそちゃんと帰って行った。それを見送り、エントランスを通る。
部屋に着いたとき、ドアノブを回してみると扉がなんの抵抗もなく開く。下を見てみると、帝統の靴があるのが分かった。
……珍し。帰ってるんだ。
今日、別れ話をしよう。そう思い、リビングに入ったとき漂ってきたのはカレーの匂いで。帝統がエプロンをつけて、キッチンに立っているのが目に入る。
「お!おかえり!」
「何…してるの?」
「いやぁ、たまには飯作って待ってよっかな〜って思ってよ!ちょうどできたとこだから食っちまおうぜ!」
そう言ってお皿に盛り付けていく帝統を見て、胸が締め付けられた。どうして別れ話をしようと決意した時に、そんなことをするのか。
とりあえず着替えを済ませ、椅子に座った。一口カレーを食べてみると、思っていたよりも美味しい。美味いか?と聞かれたので、黙って頷くと帝統は嬉しそうに笑った。
やめて…そんな風に、笑わないで…。
カレーを食べ終え、帝統が食器まで洗ってくれる。いつ別れ話を切り出そうか考えていると、コト…と何かが目の前に置かれた。
あのケーキだった。
「……これ」
「好きだったろ?」
「なんで…」
「俺、最近全然のこと考えてやれてなかったよな。自分の好きなことばっかしてに甘えて…だから俺、これからはもっとちゃんと…」
「やめて!!」