【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集
第3章 ※心と身体の距離 帝統
帝統の言葉を遮るように机を叩いて立ち上がる。ガタッと椅子が音を立てて揺れた。帝統が驚いたようにこちらを見ているのが分かる。
「帝統、私と別れて」
「……はっ?」
「全部、全部全部今さらすぎるの!もう、手遅れなの!!」
私が出ていこうとするのを、帝統が慌てて引き止める。掴まれた右腕を振り解こうとするが、決して帝統は力を緩めようとしなかった。
「なぁ、頼む。俺が悪かった、だから…別れようとか言わないでくれ」
「嫌だ…離して!」
「離さねぇよ!」
「…他に好きな人ができたの!私はその人と幸せになりたい!!」
そこまで言ったとき、帝統の動きがピタリと止まる。チャンスと思い帝統を突き飛ばそうとしたとき、逆に帝統に抱え上げられてしまった。そしてそのまま向かうのは寝室で、乱暴にベッドへと落とされる。逃げ出そうと体を起こしかけたが、帝統に肩を掴まれ押し付けられてしまいそれもできなかった。
文句を言おうと口を開いたとき、帝統がいきなり唇を塞ぐ。ぬるりと舌が遠慮なく口内を這い、私の舌を絡めとった。久しぶりの帝統とのキスに頭が蕩けかけたが、ガリッと唇に噛みつく。イテッ、という帝統の声とともに唇からつー…と赤い滴が垂れた。それを親指で拭った帝統の瞳は、見たこともないほど冷たくてゾッと背筋が震える。
「いってー…しばらく染みるやつじゃんこれ…」
「お願い、帝統…離して」
「無理」
帝統は私の声に聴く耳をもたず、また私の唇を塞ぐ。今度はさっきよりも深く唇が重なり、口内を貪るようになぞられる。また噛んでやろうかと思ったが、そんなことをする暇さえ与えられない。歯列をなぞり、逃げようとする私の舌を捉えて絡みつかせる。荒々しい呼吸と、淫らな水音が私の耳を犯した。
「っは、…顔、トロットロじゃねぇか」
「やっ…」
「他に好きなやつができたって言うのに、俺のキスでそんな顔すんのかよ?」
帝統にそう言われて、私はカッと顔に血が集まるのを感じた。私を見下ろす帝統から目を逸らし、ギュッと唇を引き締める。帝統はそんな私の様子を見て、ふっと鼻で笑うと、服の裾からするすると手を差し入れてきた。あっ、と制止の声を上げようとしたとき、待ってましたと言わんばかりに唇を塞がれ、また簡単に舌を絡めとられてしまう。