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【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集

第3章 ※心と身体の距離 帝統


「……でも、そんなに悠長に考えるわけにもいかないよね」


そろそろ、本気で彼とお付き合いをしたい。


そう思った私は、今度こそ、帝統に別れ話をしようと決心した。







「うわ〜、それ帝統が悪いと思うな〜」
「うっ…やっぱそう思うか…?」


最近、彼女が冷たい。


 そう乱数に相談してみたところ、先程の返事が返ってきた。


「うん。だって、全然家帰ってないんでしょ?しかも彼女にまでお金借りてるみたいだし…そりゃ呆れられちゃって当然だと思うな〜」
「…言い返す言葉も見つからねぇわ」
「まだその子のこと好きなの?」
「当たり前だろ!?じゃなきゃ一緒にいたりしねぇよ」
「じゃあなんでもっと優しくしてあげないのさ?」
「優しくしてあげてねぇっつーか…なんつーか、俺がただ甘えちまってるっつーか…」


最初こそは、付き合ったばかりで飽きられないようにと思って色々頑張ったりしたが、元々そういうのは自分の性に合わない。だんだんと本来の自分が姿を現し、何も言わないに甘えきってしまっていた。


今思い返せば、確かに彼氏とは程遠いかもしれない。


「なぁ…どうすりゃいいと思う?」
「ん〜、たまには早く帰ってその子の好きなものでも買ってあげたら?そういうの嬉しいと思うよ」
「アイツが好きなもの…」


そう考えた時、記念日によく買っていたケーキを思い出す。アイツはいつも同じケーキを選んで、美味しい美味しいと言って食べていた。


そう言えば、最後に俺がにケーキ買って帰ってやったの、どれくらい前の話だっけ?もうしばらく、あの大好きな笑顔を見ていない気がする。悔やんでも悔やみきれない後悔が、どっと胸に押し寄せてきた。


「…悪ぃ、今日は帰るわ」
「うんうん!それがいいよ!お金はちゃんと持ってる?」
「おう。ありがとな乱数!」
「頑張ってね帝統〜!」


乱数に見送られ、俺は例のケーキ屋に向かうために足を早めた。


「……もう、手遅れじゃないといいけどねぇ。帝統も、彼女ちゃんも」


ポツリ、と乱数は帝統の背中を見送りながらそう漏らした。







「送ってくれてありがとね」
「おう、じゃあまた明日会社でな」


手を振り、去っていこうとする彼を引き止める。振り向いた彼の頬に手を添え、少し背伸びをしてキスをした。
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