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【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集

第2章 ※いつでもその覚悟はできてる 左馬刻


スマホに目をやると左馬刻さんからメッセージが。


『今日遅くなるから先に寝とけ』


先に寝とけ、とメッセージが来るときは大体帰ってくるのは深夜過ぎだ。最初の頃は健気に待っていたものだが、最近では眠気に負けてしまうことが多いので先に寝るようにしている。


分かりました、とだけ打ち込んで、送信ボタンを押した。





洗濯したシーツを干したり、掃除をしたり、晩ご飯の準備をしたりで、すっかり休日は終わってしまう。左馬刻さんがいない休日は寂しいものの、家のことを沢山できる機会でもあるのでそれなりに充実感を得ることはできる。


1人で食事を終え、入浴も済ませた。鞄だけ整理してから寝よう、と仕事用の鞄を開けたとき、明らかにいつもは入っていない紙の束が目に入った。その瞬間、上司に帰り際仕事を押し付けられたことを思い出す。左馬刻が早く帰って来れる日で、自分もそれに合わせたいとながら返事で受け取ったのだった。


「はぁ…これ、やんなきゃ」


盛大にため息をつき、リビングに戻ってパソコンを開いた。現在の時刻は午後11時。2時までには終わらそう…となんとも過酷な就寝時間を決め、ブルーライトの光る画面へと目を向けた。







「ん……っ、あぁ、終わった…」


パタンッ、と小気味よくパソコンを閉じる音が響く。休憩を挟まずにずっとパソコンと向き合っていたせいか、肩がこの一瞬で岩のように硬くなった気がする。時計を見上げると、午後1時半。一応予定よりは早く終われたことに安堵し、早く寝ようと立ち上がったとき、玄関の扉が開く音が聞こえた。


「……どした、先寝てろっつったろ」
「おかえりなさい。実は仕事持って帰ってきてたの忘れてて…」


あはは、と情けなく笑えば、そうかお疲れさんと頭を撫でられる。その感覚が心地良くて、左馬刻さんの体に抱きつくようにして擦り寄った。


ふんわりと、甘い香りがする。


「………………あの、私、疲れたので寝ますね。ご飯食べるなら温めて食べてください」
「おー、さんきゅ。おやすみ」
「…おやすみなさい」

リビングを出て、寝室へと向かった。ベッドにモゾモゾと潜り込み、目を閉じる。眠たいはずなのに、私の頭の中はさっきのことでいっぱいだった。



どうして、左馬刻さんから甘い香りがするの?
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