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【ヒプマイ】よふかしのうた : R18 : 短編集

第2章 ※いつでもその覚悟はできてる 左馬刻


「んじゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」


ちゅっ、と軽く触れるだけのキスを交わし、左馬刻さんは私の頭を撫でて部屋を出て行った。


それを最後まで見送り、洗濯をしようと腕まくりをした。





私の恋人が"碧棺左馬刻"であると告げると、誰もが目を丸くし驚きの声を上げる。そして皆口を揃えて言うのは『それ大丈夫なの?』だ。堅気でない職業である彼と付き合うことに対する本気の心配と、遊ばれてるんじゃないの?と内心鼻で笑っている心配。


左馬刻さんが危ない仕事をしているのは重々承知しているし、巻き込まれないように出来る限りの注意も払っている。ただ、後者に関しては何も言えない、というのが事実だ。


交際を申し込んだのは何と左馬刻さんのほうで、一緒に住もうと提案してくれたのも左馬刻さんだ。普段一緒にいるときも抱き寄せて甘やかしてくれるし、私の作る料理を必ず美味いと言って残さず平らげてくれる。


愛されてる、とは思う。けど、どうしてあの左馬刻さんが私なんかと…?という疑問が常に頭のどこかにあるのも確かな話で。


私は特段顔がいいわけでもないし、男を誘惑できるような身体やテクニックを持っているわけでもない。平凡なOLだ。もっと私なんかよりふさわしい人がいるんじゃないだろうか。そう思うことも珍しくない。


でも現状、左馬刻さんとお付き合いしているし、私は左馬刻さんのことが大好きだ。そして左馬刻さんも愛をくれる。だから、もしこれが本当に遊びの関係だったとしても、壊さないように守るだけだ。


ただし、左馬刻さんがこの関係を終わらせたいと思うのなら、そのときは黙って消える。


これが、私が左馬刻さんと付き合うときに自分の中で決めたことだった。





「今日は天気いいし、お布団も干しちゃおうかな」


最後の洗濯物を干し終えて、カラッとした太陽を細目で見上げる。洗濯カゴを元に戻し、共有の寝室ベッドからシーツやらを取り出して、マットレスを持ち上げる。なんとかベランダまで持って行き、よく日が当たる場所に立て掛けた。軽くはたいて、シュッシュッとファブリーズをする。


「ふぅ…なんか達成感」


シーツもまとめて洗濯機に放り込んでから、一息着こうとソファに身を沈めた。
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