第1章 ちゃっかり宗次郎さん
「やだなぁ鎌足さん。どちらが一秒間に竹を幾つなぎ倒せるか、勝ったのは僕じゃないですか」
「勝ったのは私よ!」
「あ、あのぅ・・・・・・」
鎌足さんの乱弁天で周りの竹が1秒間に120本位、宗次郎さんは1秒間に50本位・・・・・・勝ったのは鎌足さんだ。
「鎌足さんが勝っ・・・・・・」
口元を手で塞がれる。
「時音さん・・・・・・」
うわっ!!
宗次郎さん!!
宗次郎さんの手が私の口元に!!
私は硬直して動けなかった。
「あなたが僕を勝たせてくれたら・・・・・・いいものを差し上げましょう」
宗次郎さんが私の耳元で囁く。
いいもの・・・・・・?
ぐぅぅ~。
私のお腹が鳴った。
「満たしてさしあげますよ」
満たして・・・・・・?
私のお腹満たしてくれるのかな・・・・・・?
「ちょっと、宗次郎!時音は私が勝ったって言いかけてたじゃない!!」
「そうですか?時音さん、どちらが勝ったか、判定を」
「そ・・・・・・宗次郎さんが勝ちました」
何かご飯ください宗次郎さん。
ぐぅぅ~。
「どう見たって私が勝ったじゃない!!」
「いいえ。僕ですよ」
「宗次郎さんが勝ちました」
私は宗次郎さんに味方した。
お腹・・・・・・すきました。
「くぅぅ~っ!!解ったわよ!!あげるわよ!!団子!!」
団子?
「勝負に勝った方が景品をもらえる・・・・・・僕が賭けていたのは僕自身で、僕をこれから好きに扱っていいという無形のものを賭けていました。鎌足さんはお団子」
宗次郎さんが鎌足さんから団子を受け取る。
「はい、時音さん」
「えっ・・・・・・」
宗次郎さんが私に団子を差し出す。
えっ・・・・・・えっ・・・・・・。
「もらっていいのですか?」
「もちろんです」
宗次郎さんがにこやかに微笑む。