【進撃の巨人】人類最強と死にたがり少女【リヴァイ】
第29章 昔日
「お前の意見を聞かねぇとな、団長」
ヒストリアとエレン救出の任務だったはずだが、随分と大事になったものだと、俺は隣を這うデカ物ことロット・レイスに目を向けながら、オルブド区へと向かう馬を走らせた。
作戦会議もうまく進み、あとは夜明けを待つのみ。
「……ここにいたか、エルヴィン」
会議室に1人残り、市街地の地図に目を通すエルヴィン。
「ああ。……約束通り、彼女は置いてきた」
「……そうみてぇだな」
クーデターの可能性があると話が上がったときから、俺はあいつを作戦に参加させる気はなかった。拷問を受けたとも聞く、俺の判断は正しかったというわけだ。
「お前はあいつに甘いからな。駄々こねられたら連れてくるかと思っていた」
「まさか。……確かに、あれだけの拷問を受けた後も戦意を失わなかったことには少し揺らいだがな。……彼女にはウォールマリア奪還で活躍してもらわないといけないからな。今は休んでもらうよ」
「……そうか」
こんな時代に生まれた以上叶わないことだが、彼女を大事に思えば思うほど、戦場を離れて欲しいという思いが強くなってしまう。こんな場所で命を散らすなら、恨まれたって構わない。いっそ兵士なんてやめさせてどこかで平和に暮らしてほしい。
だが、当の本人がそんな未来、1番望んでいないのもまた事実。
つくづくおかしな女だ、迷うことなく幸せに目を背け、地獄への道を突き進んでいく。
たとえその先にあるのが、破滅だと知りながらも。