【進撃の巨人】人類最強と死にたがり少女【リヴァイ】
第29章 昔日
「身内贔屓だと思われるのが嫌だったので、黙ってたんですけど……、いや、まあエルヴィン団長あたりはきっとご存知なんでしょうけどね。あの子、幼い頃にうちの家に引き取られた養女なんですよ」
シアルはへらりと笑う。
「……それで、身内贔屓ではないと?」
「うーん……ゼロとは言えないかもしれません。……だからこそ、俺も本当なら反対したいところなんですけどねー……」
「…………」
「そうですよ、反対です。リヴァイ兵長のおっしゃる通りです。兵団にそんな余裕はないですし、ガキが何を言う、兵士ごっこじゃないんです。ふざけるな、なめるなって話ですよ」
「………おい、お前はどっちの味方だ」
急に口調の崩れたシアルに、俺は少し驚いた。今まで何度か話したことはあったが、俺が知るこいつは誠実という言葉がまるまる似合うようなやつだったから。
「……あの子の言う守りたい人っていうのは、……おそらく俺のことなんです。俺が……兵士になると決めた時も、あの子に猛反対されたんです。あまり家でもうまくいってなかったので。離れたくないって、泣いてすがりついてきて……。そんなあの子が、あんなにも大きく、強くなって……」
「………まあ、今もちっせぇままだがな」
俺は足を組み直す。
「はは……。俺、本当に嬉しかったんですよ。……誰からも必要とされなかった俺を、必要としてくれて。……俺のために強くなりたい、なんて言ってくれたんですよ、アリスは」
アリス……
『アリスの気持ちなんて………』
「アリス……と、いうのか、あいつは」
あまりこういったことは思ったことがなかったが、とても、いい名前だと感じた。