【進撃の巨人】人類最強と死にたがり少女【リヴァイ】
第29章 昔日
「たった1人で約兵士4000人分の力を有すると謳われる調査兵団きっての最強の兵士……ですか」
「急に喋り出したと思ったら、なんだ。褒めたら何かもらえると思ってんなら大間違いだぞ」
俺よりだいぶ小柄な少女に見つめられているだけなのに、何故か捉えられた瞳から目を離せない。この感覚は以前にも経験したことがある。……エルヴィンか。そうか、こいつは奴に似てるんだ。
「……何故、一年を待てない。どうしてそこまでして、ウチに入りたい」
「答える義務はありません」
「おい、待て」
去ろうとする少女の腕を掴むと、
「っ………」
怪我をしているのか、顔をしかめた。初めて見た人間らしい表情に俺は少し驚く。
「……今の調査兵団に、お前みたいなガキを養う余力はない。何故そこまで死に急ぐのか……、入団させて欲しいならそれくらい答えろ」
少女は息を吸い、またあの死んだような瞳でこちらを覗き、口を開く。
「……リヴァイ兵士長みたいな強い人に、アリスの気持ちなんてわからないですよ。構わないでください。………失礼します」
ばっと腕を振り払われ、中庭を出て行く少女。俺は1人残され、先ほどまで少女が座っていたベンチに腰掛ける。
「……ははは、変わってないなー。すみませんリヴァイ兵長、あの子態度悪くて……」
「何故お前が謝る」
ふらりと、中庭の入り口から現れたのは、
「……シアル、」
「……隣、いいですか?」
俺は小さく頷いた。